「地球絶景紀行」世界にたった1つの絶景を探す、大人の紀行ドキュメンタリー

毎週水曜日よる9時オンエア

地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)

#29 大河に揺られてドナウデルタ(ルーマニア) 2010/10/29 O.A.

革命の傷跡が残るブカレスト/国民の館

ルーマニアの絶景を探す今回の旅。最初に訪れたのは首都のブカレストです。1989年12月、この街は革命の舞台となり、世界中にその名を知られることになりました。独裁者だったチャウシェスク大統領の悪政に苦しめられていた民衆が立ち上がり、大統領に反旗を翻したのです。革命は大統領夫妻の処刑という形で終わり、民衆は自由を手に入れました。今でも街のあちらこちらに革命の傷跡や独裁政権の名残があります。街の中心にそびえ立っている国民の館もそのひとつ。故チャウシェスク大統領が1500億円という大金をつぎ込んで作らせたという巨大な宮殿です。アメリカの国防総省ペンタゴンに次ぐ世界2位の敷地面積があり、部屋数は3100を超えます。どの部屋も細部にいたるまで豪華な装飾がほどこされていますが、あまりの広さに管理が行き届かないそうです。独裁者の野望を形にしたこの建物は今では皮肉なことにブカレスト観光の目玉のひとつになっています。

原始の大河ドナウデルタ

全長2850キロ、ドイツ南部を源流に10カ国を流れ黒海に注ぐドナウ川。その河口付近にある広大な湿地帯がドナウデルタです。ドナウデルタの入り口の街“トゥルチャ”からフェリーに乗ってドナウ川を下ること4時間、ドナウデルタの深部にあるペリプラヴァという村に到着しました。ここには観光船もなければツアーもありません。旅人自ら漁師と交渉して舟をチャーターし、ドナウデルタの観光に連れていってもらわなければなりません。村唯一のスーパーマーケットに行って相談すると、店員の夫が漁師で観光に連れていってくれることになりました。翌朝4:30、観光に行く前に漁師の仕事を見せてもらいました。前日に仕掛けた網を揚げるというシンプルな漁ですが、20キロを超える巨大ナマズが何匹も捕れていました。日の出が近づくと、あたり一面が淡いピンクの光に包まれました。早朝のごくわずかな時間にしか見ることのできない絶景です。

ペリカンを追って

ドナウデルタには手つかずの自然が残っています。3400種以上の魚、1150種に及ぶ植物、そして325種が確認されている野鳥。 中でもペリカンは世界有数の繁殖地です。ガイドになってくれた漁師さんのボートでペリカンを見に行ったのですが、警戒心の強いペリカンを近くで観察することは難しいそうです。エンジンを切ってゆっくりと近づいていくのですが、こちらに気づくとすぐに逃げてしまいます。一羽飛び立つと、それがまるで合図かのように全部のペリカンが飛び立ってしまいます。「残念だなぁ」ふと空を見上げると100羽を超すペリカンの群れが大きな翼を広げ旋回していました。