「地球絶景紀行」世界にたった1つの絶景を探す、大人の紀行ドキュメンタリー

毎週水曜日よる9時オンエア

地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)

#166 トランシルヴァニア 郷愁の村巡り(ルーマニア) 2013/7/19 O.A.

ブラショフ

今回は、ルーマニアの北西部に広がる、トランシルヴァニア地方を巡ります。列車は緑の山々を抜け、第二の都市、ブラショフへと向かっています。首都ブカレストから北へ、2時間半の旅路。車内で出会った人にブラショフの見どころを聞くと、旧市街がお薦めとの事でした。ブラショフでは、旧市街を巡ることにします。カラフルな建物とレンガ色の屋根が立ち並ぶ町並み。そこに一つだけ黒い建物が。「黒の教会」と呼ばれるルーマニア最大級の教会だそうです。17世紀、戦火に焼かれて外壁が黒くなってしまったのです。教会のオルガニストと出会い、パイプオルガンを聞かせてもらうことに。荘厳な音色が教会いっぱいに響き渡ります。
オルガニストお薦めの絶景はトゥンパ山からの景色。ケーブルカーで登ります。視界がひらけると街を埋め尽くす赤茶色の屋根が、緑の大地に映えていました。その中で時を止めたように建つ「黒の教会」も印象的です。彼方には、トランシルヴァニアのなだらかな丘陵がどこまでも続いていました。この地方を巡る旅の始まりです。

ヴィスクリ村

トランシルヴァニア地方に点在する小さな村々。ブラショフを出発し、緑の丘に囲まれるヴィスクリ村に向かいました。馬車が行き交う素朴な村をノンビリとお散歩。坂道をのぼって行くと「要塞(ようさい)教会」を発見しました。小さな教会を、強固な壁が取り囲み、まるでお城のようです。中世、村が侵略を受けると、人々は城壁に囲まれた教会に避難し、身を守ったのです。城壁をくぐり、中へ入ると、教会の管理を続けるサラさんと出会いました。小さな頃にここで洗礼を受け、結婚式、友人の葬式など、ずっと教会と共に生きて来たのです。草むしりや正午の鐘を鳴らしたりと、日々、教会の仕事を楽しんでいます。裏手には、村人たちの墓地が広がっていました。ここにサラさんの夫が眠っています。花を摘み、墓前に供えます。そして、墓石にキス。9年前に亡くなった旦那さんへの深い愛情を感じました。サラさんが自宅へと招待してくれました。家の前には、旦那さんと植えた2本の梨の木が、可憐に白い花を咲かせています。自宅でパリンカという自家製の果実酒で歓迎。夫との大切な思い出を聞かせてくれました。そんな彼女の絶景は、丘の上から見る村の夕暮れ。小高い丘に登ると、要塞教会が丘の斜面に沿って建つヴィスクリ村を見守っています。そして夕暮れ。日が傾くごとに村に点在する梨の木が、夕方の暖かい光に照らされセピア色に染められます。昔、村を守った砦のような教会は、その役目を終え、ほっとまどろんでいるようでした。

リメテア村

トランシルヴァニア地方で一番美しい村があると聞きヴィスクリ村を出発します。目指すはリメテア村。巨大な岩山がシンボルとなっている村です。「セーケイ人」と呼ばれる民族が作ったそうで、シンボルの岩山も「セーケイの岩」と呼ばれています。岩山の麓に広がるリメテア村では、湧き水をひいた洗濯場があったり、自宅でパンを焼いたりと、ゆったりとした時間が流れる“懐かしい風景”が今でも続く優しい村。散策をしていると、刺繍をしている人と出会いました。自宅の一室で、刺繍を展示・公開しているというのです。刺繍は、この村に代々伝わる伝統的な模様。中でも特に素敵だったのが「花嫁衣裳」。親子三代に渡って着た大切な衣装だそうです。緑の生地に真っ赤なレースの刺繍が施され、色使いがとても綺麗でした。
この家族にお薦めの絶景を教えてもらいました。それは、シンボルの巨大な岩山に昇る朝日。翌朝、岩山が見渡せる丘へ向かいます。山の稜線が金色に染まり始めました。いよいよ日の出の瞬間。太陽が昇るにつれて、麓のリメテア村も輝きだします。昔から変わらない1日が、今日も始まります。静かに佇む村は、巨大な岩山に抱かれて、迫力のある絶景を見せてくれました。