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  #2 2007年11月18日放送
 
「向日葵の自転車」

スーパーに勤め、一人で娘を育てている服部由香里(35)がケーキを手に店か ら出てきた。外で待っていた娘のあずさ(7)と自転車で家に向かう。今日はあずさの誕生日で、由香里の自転車のかごには、娘が大好きな向日葵があった。
ちょっと遅れてしまうあずさを気にかけながら進む由香里。一方、高校生の高橋淳平(17)が携帯電話で話しながら片手運転で自転車に乗っていた。剣道部をやめたことで母親と口論となっていた。そんな中、T字路で由香里と淳平が交錯。倒れたまま動かない由香里を心配した淳平は救急車を呼ぼうとするが、由香里は救急車を拒否する。そんな状態でも淳平を心配し、剣道着と竹刀袋を拾おうとする由香里だったが、再び倒れてしまう。2年前、交通事故で父親を亡くしたあずさは、母親も死んでしまうのではと心配で仕方がない。病院に運ばれた由香里は頭蓋内部出血の疑いがある。瞳孔はやや開き、対光反射もはっきりしない。生死を分ける戦いが始まった・・・。


このような自転車事故で年間1000人もの人が亡くなっています。ありふれた日常に起きる自転車事故の物語。一つの事故によって失ったもの、そして得たものとは一体・・・。「脳挫傷」と「急性硬膜下血腫」の症状や治療法などを解説します。

 


 
今日のポイント

Q.脳挫傷とは?
何らかの外力により脳組織そのものが損傷を受けることです。脳は脳脊髄液に浮かんだ状態にあるので、頭を強くぶつけると頭蓋骨の中で激しく揺さぶられます。そのため、ぶつけた場所の脳だけでなく、反対側の脳にも脳挫傷をきたす場合があります。
症状は損傷した場所により千差万別ですが、一度死んでしまった脳細胞は元には戻りませんので、損傷範囲が大きければ、たとえ命が助かっても生涯にわたって重い後遺症を残す事になります。

Q.急性硬膜下血腫とは?
脳は外側から硬膜、クモ膜という膜に包まれていますが、急性硬膜下血腫とはこの硬膜と
クモ膜の間に短時間のうちに血の塊ができることです。頭部外傷による脳挫傷部からの
出血が原因で起こる事が多く、血腫が大きくなると脳を圧迫し死に至ることもあります。

Q.治療法
・硬膜下血腫
血腫により、脳が圧迫されていると麻痺が出現したり、意識がなくなることもあります。治療としては開頭手術により血腫を除去し、圧迫をされている脳を元にもどします。
・脳挫傷
脳挫傷は怪我をした瞬間に起こり、脳の中で出血したり、むくみが生じたりすることによって周辺の脳も傷みます。進行を止めるには、出血やむくみを防ぐための薬を投与したり、手術のときに脳挫傷の部分を取り除くこともあります。そして集中治療室(ICU)で患者の心拍や呼吸などをコントロールし、脳圧を調整する処置をしばらく行います。


Q.自転車事故は多い?
きわめて多く、死亡者は年間およそ1000人にもなります。
携帯電話や傘をさしての片手運転、ポータブルオーディオの使用、スピードの出し過ぎや急な進路変更、歩行者無視の傍若無人な運転、信号無視や交差点での注意欠如、無灯火、幼児へのヘルメット着用の徹底など数え上げればきりがありません。

Q.応急処置は?
最初の2、3分が勝負となります。意識が混濁すると呼吸の仕方が悪くなり、脳に送られる酸素が少なくなるため、脳のむくみを悪化させてしまいます。両あごを両手で前方に引き上げて気道を確保して下さい。また、損傷を受けてから初療までに負ったダメージがそのまま残るので、初療までの時間が極めて重要になります。酔って怪我をした場合や睡眠中のベッドからの転落などは異常に気付かれるのが遅くなるので注意が必要です。
また頭部外傷では一時的に意識が戻って元気になってしまうこともあります。特に頭蓋骨のやわらかい幼児や脳の体積が減少しているお年寄りなどは注意が必要です。頭を強くぶつけた場合は一見元気であっても医師の診察を受けるようにしましょう。

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