「老妓抄」(昭和二五年)
岡本かの子

「年々にわが悲しみは深くしていいよ華やぐいのちなりけり」
仕事であれ、
男女の間柄であれ、
混り気のない没頭した一途な姿を見たい。
これは岡本かの子自身の華やぎ、
そして悲しみの末に生まれた作品である。

「結婚をしなかったこと、
子供を持たなかったこと、
私は、母親になりたかった……」
銀座のクラブで働いていた園子は、
ある日、親を亡くした、
一人の若い男に出逢った……


●岡本かの子 (1889〜1939)
東京都生まれ。小説家、歌人、仏教研究家。夫は漫画家の岡本一平、息子は前衛画家の岡本太郎。幼少期から音楽、舞踊のほか、兄の影響で早くから文学にめざめる。跡見女学校在学中に与謝野晶子を訪ね、「明星」に短歌を発表。昭和4年第四歌集「わが最終歌集」を出版した後、小説家への転身を決意。昭和11年、芥川龍之介をモデルにした「鶴は病みき」を「文学界」に掲載し、文壇への足がかりを得るが、作家活動はわずか4年間だけであった。その華麗な男性遍歴は、瀬戸内晴美の「かの子撩乱」に詳しい。