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2011年1月15日放送

今週のユーロは上昇が続いた。1月10日には106円台をつけていたが、1月13日には110円台後半まで上昇。110円台は12月20日以来となっている。

ユーロ上昇のきっかけの一つが欧州各国の国債入札。12日はポルトガル、13日はスペインとイタリアの入札が行われた。

ポルトガルの2014年償還債入札の平均落札利回りは5.396%で、前回の4.401%を上回っている。一方、応札倍率は2.6倍と前回の2.8倍を下回った。

スペインの2016年償還債入札の平均落札利回りは4.542%と、こちらも前回の3.576%を上回っている。ただ、応札倍率は2.1倍と前回の1.6倍を上回った。

また、イタリアの2015年償還入札の平均利回りは3.67%で、昨年11月の3.24%を上回り、応札倍率は1.412倍と前回の1.41倍とほぼ同じだった。

全体的に利回りが上昇しているものため、リスクが高まっていると見られているものの、札割れ(応札額が予定の入札額に届かないこと)するような大きな問題はなく、入札を無事通過したとの見方からユーロ買いが入った。

また、13日にはECBが開催された。政策金利は市場予想通り1.00%に据え置くことを決定。ただ、その後のトリシェECB総裁は…
「インフレに短期的な上向きの圧力がみられる」
「中期的にはインフレ圧力は抑制されたまま」
「インフレ見通しへのリスクが上方向に傾斜する可能性がある」
「インフレに関する文言の変更は全会一致で決定」
などと発言しており、ECBがインフレへの懸念を強めていることを示した。加えて、「金利を変更しないとあらかじめ約束することは決してない」ともしており、インフレが進むような場合には、利上げなどの対策をとる可能性があることにも触れている。これら発言もユーロ高を後押しした。

過去にドイツがインフレによる経済混乱を経験したことで、ECBはインフレを強く警戒する傾向がある。ただ、利上げには経済成長を抑制する側面もあり、ただでさえ緊縮財政などで低成長に陥っている欧州各国は、利上げをすれば更に苦境に立たされる可能性が出てくる。そうしたことを勘案すると、ユーロの上昇が長期的に継続すると考えるのは難しいだろう。欧州は、財政問題が意識されてきたたが、ここにきてインフレという新たな問題に頭を悩ませることになるかもしれない。

ユーロ円は上昇を続けているが、財政問題など根本は何も解決していない。ユーロ円がこのまま継続して一方的に上昇するのは難しいだろう。ドル円は方向感の乏しい状況が続いている。今週ももみあうことになりそうだ。

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