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2008年8月9日放送

ドル高の要因の一つとして、米国経済に対する極端な悲観論が一旦後退したことにより、売られすぎていたドルの買い戻しが起きていることが挙げられる。更に、米国以外の主要国の景気動向が落ち込んできたために、相対的にドルが上昇しているということももう一つの大きな要因である。ユーロ圏諸国では、既に景気が落ち込んでいたイタリアとスペインに加えて、ここに来て、優等生であったドイツの景気にも暗雲が立ち込めてきた。直近の独IFO景況感指数を見ると落ち込みが顕著になっている。また、日本でも、内閣府がその景気見通しを「局面変化」から「悪化を示している」に下方修正した。

景気の減速懸念を受けて、各国の中央銀行の金融政策スタンスにも変化が出てきた。今週、トリシェECB総裁が「ユーロ圏経済は不透明」「経済成長に下振れリスクあり」と発言したことで、利上げ期待が大幅に後退した。ECBは今後金融緩和スタンスに転じる可能性もでてきた。また、オーストラリア準備銀行(RBA)も今週行われた金融政策会合の声明文で、これまでの引き締めスタンスを変更する可能性が高いことを示唆した。米国以外の国々でも景気減速を受けて金融緩和が実施される公算が高まっている。

8月に入って為替市場ではドル高傾向が鮮明になってきている。ドル円は、先月中旬に103円台をつけた後ジリジリと値を上げて、110円近辺にまで一時上昇した。また、ドル高は他の通貨でも進行している。ユーロドルは一時1.6近辺にまでユーロ高ドル安が進行していたが、その後、ユーロ安ドル高方向へと向かい始め、特に8月に入ってからその傾向を強めている。

足元でドルは上昇しているものの、米国経済が依然不透明な状態では、ドルの上昇にも限界がある。一方で各国経済の減速が相対比較としてドルを下支えする。今後各国の経済指標の推移を見ながら、方向感を探ってくる展開になってくるだろう。来週の予想レンジはドル円108−112円、ユーロ円163−168円程度で見ておきたい。

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