榊原・嶌のグローバルナビ


マーケット・ナビ

バックナンバー

2007年10月13日 放送

 9月以降、外国為替市場では、ユーロの堅調が鮮明になってきている。9月 月初時点から現在までの動きを見ると、ユーロは米ドル、円、人民元、すべてに対して上昇し、ユーロ独歩高の状態が続いている。

こうした背景には、欧州経済が堅調であることに加え、為替市場全体がドル安・円安傾向にあることから、ユーロに資金が集中していると考えられる。

こうしたユーロ高の動きに対して、欧州サイドから懸念の声が上がってきている。今週8日に開かれた欧州財務相会合では、最近の為替レートに関しての議論が主なテーマとなった。

会議後の会談で、ユンケルEU委員会委員長は、ユーロ高に対する直接的な言及は避けたものの、現在のドル安、円安、人民元安に関しての不快感を示し、間接的にユーロ高に懸念を示す発言をしている。その他のメンバーも会議後同様の発言をした。

こうした欧州サイドからのユーロ高牽制姿勢を受けて、来週19,20日に開催される7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で最近の為替市場の動きに関して議論がされるようである。

前回4月のG7声明では、人民元の上昇を期待する内容を改めて確認するとともに、投資家の円売りに対する安易な姿勢を牽制する発言が盛り込まれた。
今回のG7では、ユーロ高を懸念していることを示唆する内容が入るかが注目される。

しかしながら、欧州サイドにはジレンマがある。足元のユーロ圏の経済状況は健全であり、インフレ懸念は依然として払拭されていない。ECBが重要な指標の1つとして見ているマネーサプライの動向を見ると、2006年の後半から増加傾向にあることがはっきりと確認できる。マネーサプライの増加は将来のインフレリスクとなりうるというのがECBの基本的な考え方であり、インフレを抑制する効果のあるユーロ高を抑えることには抵抗があると推測できる。
最近のECB要人の発言を見ていると政治サイドからのユーロ高懸念に一定の理解を示しているものの、大きく踏み込んだ方向性を示すことに対しては躊躇せざるを得ないであろう。

今週は、米国株式市場の安定、日銀の政策金利据置きなどの動きを受けて、円安が加速する1週間となった。来週も環境的には円安傾向が継続する可能性は高い。

しかしながら、波乱要因となりうるものもある。来週以降、米国金融機関などの7-9月期の決算が相次いで発表されるが、これが予想よりかなり悪い結果となれば、一時的に米国株式が下落し、為替市場でも円高方向に振れる可能性もあるので注意をしておきたい。また、G7前の各国要人の発言にも注目しておきたい。