2007年 3月24日の放送


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今週22日、米国の連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され金利の据置きが決定された。据置きは予想通りであったが、同時に発表された声明文に2つの大きな変化があった。1つ目は前回まで使われていた「更なる利上げの可能性」という表現が削除されたこと。もう1つは「住宅セクターの調整は続いている」という認識を示したことである。

FRBのメンバーの多くは住宅市場の底入れが近いという見解を示していたが、予想以上に落ち込みが激しいという認識に変わり、場合によっては利下げも有り得ると考え始めたと推測される。


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FOMCで金融引き締めのバイアスが解除されたことを株式市場は好感した。声明文の発表を受けて、米国株式市場は急上昇し、12400ドルまで回復。利下げ期待が強まったことにより、米国経済がソフトランディングする可能性が高くなったという解釈を株式市場がしたことによって、株価が上昇したということであろう。

2月後半に世界の株式市場が急落し、相場が不安定になっているときに、米国の利下げ期待は市場を安定させる絶好の材料と受けとめられたのである。

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米国株式市場が反転したことで、各国の株式市場にも安定感が戻ってきた。日経平均も一時期16500円近辺まで下落していたが、17000円台半ばまで上昇してきている。また、世界的な株価の急落の原因となった中国株式市場も堅調に推移。

こうした動きを受けて為替市場も落ち着きを見せ、従来のテーマである「金利差」に再び市場の注目が戻り、ゆっくりとした円安傾向になっている。円相場は急激な円高の展開をほぼ解消し、1月・2月の平均的な水準にある。

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市場は再び正常な状態に戻りつつあるが、今後再び大きく動く可能性がなくなったわけではない。FOMCの声明文で示されたように米国住宅市場の冷え込みはかなり深刻なものであるかもしれない。米国の各金融機関は更なる焦げ付きを防ぐために、新規の住宅ローンの貸し出しに慎重になっているようである。

こうした金融機関の慎重な姿勢が住宅市場を更に落ち込ませる可能性も否定できない。また、再び円安傾向に戻ったことで、欧州サイドからの円安牽制の発言が再燃する恐れもある。4月にG7、5月にG8財務相会合を控え、政治サイドからの円高圧力にも注意が必要であろう。

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TS指数を見ると、市場関係者は来週も今週の円安の流れが継続すると見ているようだ。市場全体が落ち着きを見せている中、為替市場は再び、金利差に注目が集まり円安傾向が続くと考えている関係者が多い。

ただ、期末を控え機関投資家も新規の投資を控える時期にあるため、大きな相場変動は考えづらい。狭いレンジでの落ち着いた相場展開となる可能性が高いと考えておきたい。