2006年 11月4日の放送


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 10月27日、米国の7-9月期のGDP実質成長率が発表された。事前の市場予想は前期比年率で+2.1%であったが、実際に発表された数字は+1.6%と予想を大きく下回る結果となった。内容を見てみると、住宅関連部門の落ち込みが数字の下振れ要因となっている。この結果を受けて、それまでのムードから一変して米国経済の先行きに対する不安感が一気に市場に広がった。


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 また、今月1日に発表された10月の製造業景況感指数は、51.2と大幅な落ち込みを見せた。これは市場予想の53をも下回っている。グラフを見ると、今年に入ってから明らかな下落傾向にあることが見て取れ、景気の強弱の分岐点であると言われている50にも近づいている。

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 このほか、今週発表された消費者信頼感指数などの指標も予想を下回ってきており、米GDPの発表を契機に、一気にアメリカ経済への不安感が噴出す形になった。そうした影響は金融市場にも現れてきていて、米国の10年物金利は10日程度の間に4.8%台から4.5%台に大きく下落、短期金利も来年3月の利下げを織り込む水準にまで下落している。また、ドル相場もそれに歩調を合わせる形で、ほぼ全通貨に対して下落を続けている。

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 また、それまで史上最高値を更新し続けていた米国株式にもやや暗雲が立ち込めてきた。ニューヨークダウ平均は10月26日に12,167の史上最高値を更新したが、GDPの発表以降、軟化傾向に反転してきている。金利市場で利下げ期待がでているにもかかわらず、株価が下落していることは、市場の景気先行きに対する不安感が大きいことを示唆しているのかもしれない。

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 来週の為替相場であるが、基本的にはドルに対する不安感が払拭できず、ドル相場はレンジの中、やや軟調に推移すると考えられる一方で、円金利の更なる上昇が中々現実化しない中では、円高になっていく展開も予想しづらい。ただ、ドル以外の通貨に対しては依然、円安の水準での推移になると予想している。