2006年 9月9日の放送


< 1 >

 先週、日本のCPIショックから円安が進行したが、今週はそれに対しての調整の1週間となった。市場を取り巻く経済環境に変わりはないものの、円売りポジションがかなり積み上がってきている中で、今後政治的な行事が続くことに対する警戒感が広がってきている。木曜日にはドイツのミロー財務次官が、G7では円安問題も必ず議論されるとコメントしたことを受けて円高が進行。特にユーロ円での調整が顕著となった。


< 2 >

 G7は16日にシンガポールで行われる。ドイツやフランスなど、ユーロ圏の主要国は現在の対ユーロでの円安進行に対して不満が多い。しかし、日本側としては、対ドル相場が安定していることもあり、大きなテーマにしたくはないというのが本音であろう。今回は日本が議長国ということもあり、難しい運営を迫られる。また、9月から10月にかけて、米財務省による「為替報告書」の発表が予定されている。ここでは人民元レートに対する対応も注目される。

< 3 >

 このグラフを見てもわかるとおり、米国の対中貿易赤字は、一時、縮小傾向にあったが、ここ数ヶ月再び拡大してきている。米国経済の先行きが不透明になってきている中、こうした赤字幅の拡大は米国の雇用を中国が奪っているとの批判を強める可能性がある。支持率が低迷しているブッシュ政権にとっては、1つの大きなアキレス腱になってくるかもしれない。

< 4 >

 シューマー上院議員は、人民元に大きな切り上げの動きが見られないことから、「中国製品に制裁関税を課す法案を9月中に可決させる」と発言しており、アメリカ国内で人民元の問題が再び脚光を浴びてきそうである。今月ポールソン米財務長官の訪中が予定されており、それに続いて「為替報告書」の発表も控えているために、今後、人民元への切り上げ圧力が強まりそうだ。しかし、中国側は、大幅な切り上げをしないと発言しており、アメリカ側の要求をすんなりとは呑めない。これから数週間、激しい攻防が繰り広げられそうである。

< 5 >

 来週の相場に関しては、市場関係者全員、円高を予想している。直近の動きが円高であることに続いて、来週もG7に向けて一層の調整がある可能性が高いと考えているようだ。ただし、既に今週かなり調整をしていることから考えると、大きな調整の可能性は徐々に小さくなってきている。G7前の要人の発言に振り回される相場展開になるであろう。