2006年 9月2日の放送


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 8月25日に日本の7月の消費者物価指数が発表になった。今回は同時に基準の見直しなどが行われた。まず、基準年を2000年から2005年に変更するとともに、対象品目の大幅な入れ替えを実施。DVDレコーダーや薄型テレビなどが追加された他、価格調査・指数作成方法の見直しも行なって、表示価格と実際の価格の乖離をある程度反映できる手法に変更をしている。この改定により、0.2%-0.3%の下方修正効果があると専門家は予想していた。


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 改定前の6月の全国消費者物価指数(除く生鮮品)は前年比+0.6%であったが、7月は改定前の基準で0.7-0.8%程度のプラスと予想されていた。改定の影響を考慮しても+0.5%程度には収まるというのが市場の大方の見方であったが、実際に発表された数字は前年比で+0.2%と予想を大幅に下回るものとなった。改定の影響が0.5-0.6%程度あったということであるが、このベースで引き直してみると、今年に入ってから物価はほぼ横這いであったということになる。安定的なインフレ基調を量的緩和解除、ゼロ金利解除の条件としていた日銀の行動根拠はおおきく揺らぐ結果となったわけである。

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 こうした予想外の結果を受けて、金利は急低下している。10年物国債の利回りはCPI発表前も徐々に低下していたが、発表後低下のスピードが加速し、一気に1.6%台にまで低下してきている。このレベルは3月の量的緩和解除の前のレベルであり、日銀の追加利上げを否定するばかりではなく、日銀の前回の利上げに対しても、その行動が適切であったかという疑問を投げかけているといえないこともない。

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 為替市場の方も、日銀の追加利上げが困難になったことを材料に円安が進行した。対米ドルでは、アメリカの景気先行きへの不安があるために円安は小幅に終わったものの、その他通貨に対しては、円安トレンドが継続している。ユーロ円は今週150円を突破し、ユーロ発足以来の最高値を更新した。多くの国が利上げ基調にある中、利上げが遅れそうな日本の通貨が売りの対象として狙われている形となっている。

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 今週は、市場関係者も気迷いとなっている。円安基調に変化はないとしながらも、最近のスピードがやや速すぎるために警戒感をもっている人が多いようだ。円の金利は先進国の中でも突出して低い水準にある。このまま利上げが遅れるようであれば、更に円安が進行していく可能性が高くなってくる。今月のCPIの数字の発表に今後注目が集まってくるようになるであろう。