2006年 7月1日の放送


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 6月29日のFOMCは予想通り、0.25%の利上げを決めた。しかし、それに伴って発表された声明文は前回までの強めの内容から一変している。中でも、インフレに対して、コアインフレは引き続き高いと認める一方で、インフレ期待が抑制されつつあるとの認識を示したことはやや驚きであった。また、経済成長のスローダウンにも言及し、今後の金融政策は景気と物価動向次第という、極めて中立な立場をとっている。


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 こうした、FOMCの声明に対して、金融市場は大きく反応している。まず、為替市場では、アメリカの利上げが継続されるとの見方で買われ続けてきたドルが一転して反落。発表後の数時間の間に116円台から114円台まで一気にドルは下落した。また、株式市場は利上げ終焉の可能性を好感し、NY株式が急進。これを受けて、日本の株式市場も大きく上昇している。

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 FOMCでの認識の通り、いくつかの指標では、景気減速を示す傾向が出始めている。今週発表された5月の中古住宅販売件数は667万戸と3ヶ月連続の減少となり、ここ1年間を見ても、明らかに減速傾向が見られる。一方、新築住宅販売を見てみると依然高水準を維持しており、指標によってまちまちの結果が出ているので、今後の先行きは非常に混沌としているのも事実である。

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 一方、インフレに関して、FOMCではインフレ期待の抑制という表現があったものの、足元の環境は予断を許さない状況にある。現在のグローバルなインフレの原因の1つとなっている原油価格は、一時期70ドルを割って推移していたが、ここに来て、再び上昇に転じ、4月につけた最高値である75ドルにせまる勢いとなってきている。今後原油価格が上昇していけば、インフレ懸念も高まっていくため、景気低迷、インフレ加速というバーナンキFRB議長にとっては、非常に難しい展開となる可能性も高くなってくる。

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 TS指数を見てみると、市場関係者は円高予想に大きく傾いている。FOMCの声明がかなりサプライズだったために、この影響が長引くと考えている関係者が多い。しかしながら、ドル金利が5.25%に上昇していることも事実であり、金利差は厳然として存在しているので、ドルを一方的に売り込むというという展開も現段階では考えにくい。一方で金利差を材料とした安易なドル買いの反動でドルの上値は重く、基本的にはレンジ相場を抜けるような展開にはならないと予想している。