2006年 6月17日の放送


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 6月5日にバーナンキFRB議長が行なったタカ派発言以降もFRB関係者による同様のタカ派発言が相次いでいる。FRBはインフレへの対決姿勢を鮮明に表明している形となっている。これを受けて、年初来上昇を続けていた株式市場が大きな調整局面に入った。また、株式市場から債券市場への資金シフトが起きているために、利上げ期待が強いのにもかかわらず、長期金利は低下している。こうした動きが世界中に波及してきており、バーナンキショックとも呼べる現象が起きている。


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 また、金融市場の混乱により、米国投資家がエマージング諸国から資金を引き上げる動きも見られる。これが、ドルへの資金還流となり、ドル相場も反転して上昇してきている。先日BISが、四半期レポートを「リスク資産からの退却」というタイトルで発表したが、まさにFRBのタカ派発言をきっかけに、リスクの縮小が進んでいる。

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 バーナンキ議長の前任であるグリーンスパン元FRB議長が就任したときも、「ブラックマンデー」と呼ばれた株式市場の暴落の洗礼を受けた。バーナンキ議長もグリーンスパン元議長と同じ試練を市場からたたきつきられているのかもしれない。

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 FRBは2004年から利上げを開始し、その後も継続的に利上げを実施してきた。しかし、それにもかかわらず、インフレは低下していない。ここ2年ほどを見ても、米消費者物価コア指数は目安の2%を超える水準で高止まりしたままである。米国景気がピークをむかえ、いくつかの面で景気減速の予兆が出ている中で、インフレは依然高水準という非常に難しい課題を新議長は抱えることとなっている。

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 こうしたインフレの高止まりの背景には、原油価格が高い水準で推移していることが挙げられる。今回の一連のリスク資産の縮小により、各市場が大きく調整したにもかかわらず、原油市場だけは高止まりをしたままである。これは、潜在的な需給バランスが非常にタイトであることが原因と考えられる。原油価格が更に上昇すると米国経済もスタグフレーションに突入する可能性も考えられ、しばらくリスク回避の行動は続くかもしれない。