2006年 5月13日の放送


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 ここのところ円高が止まらない。金曜日の東京市場では、一時1ドル109円に突入する展開となった。4月のG-7をきっかけに始まったドル安円高であるが、その後も、アメリカがドル政策に転換したのではないかという観測が益々強くなり、円高圧力が更に強まる形となっている。また、今週FOMCが行われ、0.25%の利上げが実施されたが、声明が今後の利上げ継続に対して、ややトーンダウンした内容であったこと、日本の利上げが6月にも行われるという観測が高まっていることも円高に拍車をかけている。


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  また、こうした円への日本の反応に対して、アメリカが先手を打って牽制していることも、市場を過熱させている原因の1つである。5月4日アダムス米財務次官は、介入は行わないのが適切であり、円安に誘導するような発言も控えるべきという主旨の発言をしている。こうした米国からの牽制球が日本の当局の行動に制約を与えるのではないかという観測が市場関係者の中に広がっている

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 今回の相場展開は2003年に行われたドバイでのG-7後の展開に酷似していている。このときも日本の当局の円売り介入などによりドル円は115円から120円のレンジで推移していたものの、G-7で為替レートの更なる柔軟性を求める声明がでたことで円高が加速、ドル円は118円から108円まで一気に10円円高になった。その後もじわじわ円高が進み、結局105円台まで円高が進行した。今回も115円ー120円のレンジが数ヶ月続いた後、G-7により118円近辺から一気に109円台にまで下落してきており、ここまでは2003年の相場展開の再現となっている。

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 ドル安の進行に追随する形で金価格も急上昇している。原油価格の高騰などにより世界中にインフレ懸念が高まっていることを受けて金価格は、上昇傾向にあった。そして、ここにきて、急激なドル安が進んだことで、米ドルから金への資金シフトが起きており、金価格が急騰している。また、原油価格は短期的に緩んだ局面もあったものの、再び上昇傾向に入っており、こうしたことから、金価格は史上最高値の870ドルも視野に入ってくる動きになってきた。

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 TS指数を見ると市場関係者は依然円高を予想している。日米通貨当局から円高を懸念する強い発言がない限り、この円高の流れが反転することはないと見ている関係者は多い。しかし、アメリカサイドからそうした発言が出てくることは考えづらい。また、日本の当局は米国からの牽制球をどう受け止めるか、難しい対応を迫られるであろう。ここまでのスピードがかなり速いため、ここからがスピードは緩やかになっていくであろうが、引き続き円高傾向は続きそうである。