2006年 3月4日の放送

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 3月3日、日本の消費者物価指数1月分が発表されたが、注目の消費者物価指数(除く生鮮品)は前年比+0.5%と予想の+0.4%を上回った。量的緩和解除の条件として、物価が基調的にプラスになることを挙げていた日銀にとって、この結果は量的緩和解除に向けての追い風となり、早ければ3月、遅くとも4月には量的緩和の解除が開始される公算が非常に高くなった。


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 福井日銀総裁のタカ派的発言や消費者物価指数が予想を上回るプラスになったことを受けて、日本長短金利が上昇し始めている。10年物国債の利回りは1.6%台半ばまで上昇し、1月から見て0.2%程度上昇してきている。その他、短期金利も中期金利も軒並み上昇してきており、量的緩和解除早期開始に対する期待感が現れている。しかしながら、量的緩和解除終了後も当面ゼロ金利が続く可能性も高く、ここから一層の金利上昇はまだ考えづらい状況である。

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 また、ヨーロッパでは2日にECBが0.25%の利上げを実施し、政策金利は2.5%となった。利上げ発表の後のトリシェECB総裁の会見では、「物価安定のために必要な措置を今後も取っていく」「我々の金融政策は依然緩和的である」などの発言が見られ、今後の利上げに含みを持たせる内容となった。

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 市場ではヨーロッパも利上げサイクルに入ったと判断し、長期金利が上昇し始めている。ユーロの10年物の金利は3.6%近くまで上昇した。また、日欧の金利上昇につられる様に米国でも長期金利が上昇し始めており、日米欧3極で金利が同時に上がり始める結果となっている。為替相場は日本の量的緩和解除が早まると期待して、一時期115円台半ばまで円高が進んだものの、こうした3極同時の金利の動きに止められ、依然方向感がでない状態である。

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 人民元であるが、今年に入って米ドルに対する上昇のスピードが徐々に加速している。特にここ1週間は、アダムス米財務次官訪中を受けて加速度が更に増している。人民元は昨年7月の改革発表後も市場機能を整備し、今年1月からは、1日の終値を市場レートによって決める制度をスタートさせている。米国からの切り上げ圧力が強くなってきても、中国は現状のスタンスを維持し、年間で3-5%程度の切り上げになるよう徐々に人民元を上昇させていくであろう。従って円相場に大きな影響はないものの、円安進行を抑える効果は発揮しそうだ。

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 中国、インド、ブラジル、ロシアを「BRICS」と命名したゴールドマンサックスは、今後成長が期待できる新しいグループとして、11カ国を紹介し「ネクスト11」と命名している。そのうちのいくつかの国はすでに日本でも、投資対象として注目され始めており、今後この11カ国の動向にも注目しておきたいところである。