2006年 1月21日の放送

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 昨年6月、温家宝首相が人民元改革についての3原則を発表した。それ以降中国はこの原則に沿って、徐々に人民元改革を進めている

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 まず昨年7月21日通貨バスケットを参考に調整した管理フロート制を導入、同時に約2.1%の切り上げを実施した。また、米ドルとの1日の変動幅を上下0.3%、それ以外の通貨に対しては1.5%とし、今後適当な時期に変動幅を調整していくことを明示した。

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 その後の市場動向を見ると7月の制度改革以降、0.5%強程度の切り上げにとどまっている。これは、大幅な相場変動は経済に悪影響を及ぼすとの懸念から、3原則の1つである「漸進主義」に従って、通貨当局が緩やかな切り上げとなるよう市場で調整をしていることが原因と考えられる。

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 まだ、制度面においても、中国は市場関係のインフラ整備など徐々に改革を進めている。まず、昨年8月に銀行等にフォワード取引、スワップ取引の取引を許可することを発表した。翌月にはドル以外の通貨に対する人民元の1日の変動幅を1.5%から3%に拡大した。また、今月4日より、銀行の顧客向けスプレッドを拡大し、銀行間市場での取引の活発化を図り、同時に人民元の中心レート設定に銀行間取引のレートを採用するなど、市場の整備にも着々と取り組んでいる。

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 しかし、こうした改革に対し海外からは依然不十分との声が多く挙がっている。11日に発表された2005年の中国の貿易黒字は04年に比べ約3倍の1018億ドルと急増している。今後、米国を中心に益々人民元の切り上げに対する圧力が強まってくる。

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 しかしながら、外圧に屈することなく中国は3原則に従って徐々に改革を進めていくと考えられる。既に発表しているように、今後、先物やデリバティブ商品を導入し、市場の利便性を高め、人民元建ての債券発行を広げていくなど資本市場を徐々に整備していくであろう。そうした改革と同時に人民元の変動幅の拡大や、それに際して若干の切り上げをしていくであろう。4月に胡錦濤中国国家主席の訪米が予定されており、その前にこうした動きが起きる可能性が高いと見ている

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