2005年 12月3日の放送

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 ここのところ、急速に株高・円安が同時進行している。こうした動きは1980年代後半から1990年前半にかけて起きたバブル経済のときの動きに酷似している。国内の経済が回復し、リスクマネーが動くようになると、株式や外貨などのリスク商品に資金が流れることにより、株高と円安という一見矛盾しているような相関関係が発生してくる。今回の場合も、日本経済の本格回復と低金利により過剰流動性がこうした現象を引き起こしていると考えられる。

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 ここのところ続いていた円独歩安の流れは一向に終わる気配を見せていない。各国がインフレ懸念抑制のため、金利を上げている一方、日本はゼロ金利政策からの脱却が遅れるという観測が強まっていることが原因である。今週の岩田日銀総裁の発言でもわかるように、例え量的緩和の解除が実施されていったとしても、その後、ゼロ金利から抜け出すのには日銀自身も慎重な態度を見せていることが、市場の観測に拍車を掛けている。

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 一方、先行きの腰折れが心配されていた米国経済であるが、こちらのほうは市場の懸念を払拭するような経済指標が相次いでいる。今週発表された第3四半期のGPD改定値は年率で4.3%と速報値から上方修正され、2004年の第1四半期の水準にまで回復して来ている。内容を見ても、個人消費がGDPの伸びに大きく寄与しており、アメリカの消費意欲が依然旺盛なことを占める結果となっている。

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 また、アメリカ経済の先行きを占うにあたって、重要視されている住宅の売れ行きであるが、こちらも引き続き好調である。月曜日に発表された中古住宅の販売は市場予想を下回る結果となったものの、火曜日に発表された新築住宅販売は143万戸と過去最高の売上となった。アメリカ住宅市場のピークアウトがささやかれている中、市場の懸念を払拭する驚異的な売れ行きが続いているという結果になっている。

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 日本のゼロ金利政策が今後も当分は継続するという日本側の状況と、引き続き底堅いアメリカ経済というドル側の状況を考えると、今後もドル高円安の流れは続くと考えるのは自然であろう。GSEC指数でも、市場が円安を引き続き予想していることを示している。これから、ボーナスシーズンに入るため、個人による海外への投資が加速する可能性もあり、引き続き円全面安の展開が続く可能性が高い。