2005年 11月26日の放送

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 11月1日に行われた政策決定会合の議事録が今週発表された。この会合では0.25%の利上げが決定され4.00%に金利が引き上げられたが、議事録の内容を見てみると、これまでの会合とは雰囲気が変化していることが明らかになった。アメリカ経済は依然底固いという認識に変化はないものの、今後発表される経済指標には敏感になる必要はあると先行きに若干の懸念を持ち始めているのが読み取れる。また、今後の金融政策で利上げが行き過ぎるのではないかという懸念も複数の委員から出されており、FRBは来年以降の利上げ継続に慎重になり始めていることが明らかになった。

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 金融市場もこの発表に素直に反応している。ここのところの原油価格の下落で低下傾向にあった長期金利は更なる低下傾向に入っている。また株式も金利の上げ止まりを好感して上昇のスピードを速めており、今年の高値圏にまでほぼ回復をしてきた。しかしながら、為替市場だけは非常に反応が鈍い。発表後は一時的にドルは売られたものの、その後すぐに回復し結局大きな調整とはなっていない。

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 一方の欧州では、ECBのトリシェ総裁が「我々は金利を上げる準備がある」という趣旨の発言をし、12月1日の政策決定会合での利上げがほぼ確実視されている。短期金利市場は現状の2.00%よりの0.5%ほど高い水準で推移しており、市場は今回、ないしは今回と次回で0.5%の利上げが実施されることを期待している。ユーロ圏では原油価格の高止まりなどにより消費者物価指数が高く推移しており、ECBとしてもインフレ懸念の払拭のために利上げを決断せざるを得ない状況にあるということであろう。

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 日米欧の長期金利の最近の推移を見てみると、日本では一時期日銀が早期に量的緩和を解除するというムードが盛り上がったものの、政治サイドからの横槍で急速にしぼみ、再び元の水準に戻っている。アメリカも原油価格の下落やFOMC議事録のハト派な表現を受け、金利は低下してきている。また、短期金利の利上げによるインフレ抑制への期待や原油価格の下落などを好感して長期金利はやはり低位安定している。グラフをみてもわかるように、日本と欧米の金利差は拡大傾向になったが、今月中旬からは横ばいの動きとなっており、金利の面から見ると、円安は一服することを示している。しかし、逆に考えれば、金利差は縮小傾向にないことから、円高に反転する可能性も低いということもできる。

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 GSEC指数を見ると、市場関係者も相変わらず円安予想する人が大半を占めている。FOMCのハト派のコメントにも関わらずドルが大きくは下落しなかったのが、市場関係者のドル高予想を更に強めているようだ。12月はボーナスシーズンであり、日本の個人マネーが更に海外に流れる可能性は高い。今後、大きなサプライズがない限り、円安の流れが反転するのは今のところ考えにくい状況である。