2005年 11月12日の放送

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 先週、ユーロ圏の財務相会合で、ECBに対し利上げをしないよう要請していくとこで合意がなされた。ここのところ、ECBの幹部がインフレ懸念を相次いで表明し、利上げへの地ならしをしていることに対抗した動きと考えられる。ユーロ圏の景気はGDPの成長率が1%の前半と先進国の中で最も低い。インフレ懸念による利上げが景気を一層冷やす可能性も十分、考えられる。ここのところのフランスでの暴動も移民の失業問題が大きな原因であり、欧州経済の根底にある社会問題を露呈する形となった。こうした環境下での今後の金融政策の舵とりは非常に難しいものとなってきた。

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 こうした、政治サイドと中央銀行の対立に加え、フランスでも暴動による社会不安が高まっていることで、ユーロが下落傾向にある。米国経済が活況で、金利を継続的に上げている中で、ドルの強さに対し、ユーロの弱さというのが一層鮮明になっている形である。チャートを見てわかるように、この2年間切れなかった1.18台から下抜けをしてしまったことで、2003年の後半にあった1.07というレベルも視野に入りつつある。

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 来週、ブッシュ米大統領はアジアを歴訪する。15日は日米首脳会談が開催される予定であるが、それに先立って沖縄の米軍基地問題には一応の決着がついた。また、ブッシュ大統領は米国産牛肉の輸入再開を要求すると考えられるが、日本側はこれに対して、前向きな姿勢で臨むであろう。また、イラクからの自衛隊撤退問題もテーブルにのる可能性があるが、経済面での話はあまり想定されておらず、金融市場への影響は殆どないものと考えられる。

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 20日には米中首脳会議が開かれる。市場では、ブッシュ大統領訪問を受けて、人民元の切り上げ等があるのではないかという憶測も見られるが、その可能性は低いと見ている。ブッシュ大統領は人民元の一層の切り上げを要請するであろうが、これに先手を打つ形で、中国人民銀行は内需拡大による貿易黒字の削減を目指すことを表明している。更に、先日米中間で繊維の輸入問題について一応の合意がなされたことで、今回の訪問においてのアメリカ側からの圧力もやや緩和された形になっている。日米同様米中の首脳会議もそれほど金融市場に大きな影響を与えないと考えるのが自然であろう。

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 GSEC指数を見ると、先週に比べ円安を予想する市場関係者が減ってきている。ただし、中期的にはまだドル高を予想している関係者は多い。アメリカの経済が予想以上に強いことを受けて、FFレートも4.5%までは規定路線、場合によっては5%まであげる可能性も出てきたということで、ドル高感は強い。加えて、今月から来月にかけては、米雇用創出法による駆け込みのドル買いも出てくるため、当面、ドルは底堅い展開になるであろう。