2004年 7月3日の放送

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 FOMCは今週水曜日の会合で2000年5月以来4年3ヶ月ぶりに利上げを実施した。この結果、FFレートの誘導水準は0.25%引き上げられ、1.25%となった。また、会合後に発表された声明文には、前回と同様の「金融緩和の解除は、“measured” すなわち慎重なペースで行われる」という文言が残された。これらは、市場の予想通りであった。ただ、「物価安定のために必要であれば、経済見通しの変更を行う」という一文が加えられ、幾分インフレリスクに配慮したものとなっている。

  次回のFOMCは8月10日に開催されるが、市場の中心的な予測は、6月に引き続き0.25%の利上げが繰り返されるとみている。最近の米国経済指標には、例えば6月の非農業雇用者数が予想を大幅に下回り前月比11万2千人になる等、物価上昇と金利上昇の影響から、若干減速傾向が表れているが、8月の利上げが見送られたり、あるいは、逆にインフレ懸念から利上げ幅が0.5%となるとの見通しは今のところ支配的なものとなっていない。このように、8月の利上げ幅の予測中心値が0.25%である限りは、米国の景気・金融政策が為替レートに与える影響は限定的とみて差し支えないであろう。

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  木曜日に発表された6月の日銀短観は好調な結果となった。大企業製造業の業況判断DIは22と、3月調査の12から10ポイントも改善し、91年8月調査以来の高水準となった。また、9月の予測値も21と高止まりしている。さらに、同じく大企業製造業の2004年度設備投資計画も前年比20.4%となり、3月調査の同7.4%から大幅に上方修正されている。しかし、前日に発表された5月の鉱工業生産には、在庫調整の兆しも現れてきており、短観の内容と重ね合わせれば、わが国の景気は7−9月期こそ好調を維持するものの、10−12月期にはスローダウンの懸念も出てきている。

  すでに日本株買い・円買いポジションが積み上げられていたことや、好調な内容が逆に景気のピークアウト暗示していると受け止めた向きあり、短観に対する株式・為替市場の反応は極めて限定的なものであった。このように、金融市場は、わが国経済の好調さをすでに完全に織り込んだ感が強く、今後、為替市場は、日本経済に関して、むしろ、ネガティブ・サプライズに敏感になる可能性が否めない。

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  新聞各紙、テレビ各局の世論調査によれば、5月から6月にかけて、小泉内閣の支持率は、2.8-14%低下している。一般的には、年金改革法案の成立や自衛隊の多国籍軍派遣に対する不満の表れと分析されているようである。「選挙はみずもの」といわれるとおり、選挙結果を予測することは難しいものの、外為市場では、短観に向けて円の買い持ちポジションが形成されたことあり、内閣支持率が低下している中では、11日の参院選に向けて、円を売り戻す動きが強まる可能性がある。

  また、ひとたび自民党敗北となれば、政局の混乱が予想され、また、海外投資家の小泉政権に対する信任も継続しているため、さらに円が売り込まれる公算が高い。実際に、98年の参院選における予想外の大敗によって、橋本内閣が崩壊した後は、5円程度の円安となっている。

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  一部の市場参加者の間では、最近のレンジ相場を受けて、本年3月の103円42銭、5月の114円90銭をもって、ドル円相場はすでに今年の高値と安値を付けたとの見方がある。市場では円高センチメントが根強い中、なかなかそれが実現しないが故のフラストレーションの結果であろう。しかし、もしそうだとすれば、今年の年間変動率は10.5%と、1985年のプラザ合意以降最低となり、また変動相場制移行後では、史上四番目の低水準となる。したがって、歴史的にみれば、年末までに、103円か115円が抜けて、100円または120円をトライする局面が到来すると思っておいたほうがいいかもしれない。

  先週も申し上げたように、私自身は、円安リスクをみている。経済面では、10−12月に米国・中国経済が減速すれば、日本経済も悪影響を受ける。また、世界的な金利上昇は、政府債務が先進国中最大のわが国に、もっともネガティブな影響が出て来る。また、参院選の結果次第では、小泉政権が崩壊する可能性があり、その場合、円安になる。さらに、11月の米大統領選でブッシュ敗北となれば、ケリー政権下ではドル高政策が採用される公算が高くなる。この場合、年末までに1ドル120円までドル高となっても不思議ではない。

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  金融市場では、米国の超低金利解除は慎重なペースになるとの見方が支配的な中、8月の利上げ幅も0.25%とみられており、このような予測が継続する限り、米国経済・金融政策が為替相場に与える影響は限定的なものになろう。一方、わが国経済の好調さはほぼ完全に市場に織り込まれたため、ポジティブ・サプライズが為替相場をさらに円高に導く可能性も低い。むしろ、ネガティブ・サプライズが円売りを誘発する場面が出てこよう。したがって、当面はレンジ相場が継続しよう。

  ただ、市場は、短観に向けて円を買い持ちにしたとみられ、自民党苦戦の見方が強い11日の参院選に向けては、円を売り戻す動きも出てくる可能性がある。したがって、基本的には、レンジ相場を予想するが、選挙予測如何では、円が売られる場面があるかもしれない。