2004年 4月3日の放送

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  注目の日銀短観(3月実施分)が発表された。事前の予想通り、企業の景況感は大きく改善していることが確認された。今回より調査方法が見直され、業種分類の見直し・拡充、集計規模の区分基準変更等が行われ、調査対象企業が12月調査時点の8204社から10848社に増えている。このため前回との比較が難しいが、日銀は新ベースでの12月調査との比較も発表している。それによると、上のグラフにあるように、大企業・中堅企業・中小企業(全産業ベース)の3グループ全てで改善していることがわかる。

  米国や中国向け輸出が好調なことや、株価の大幅上昇が景況感の改善に貢献したようだ。ただし先行きはやや慎重で、3グループともおおむね横ばいとなっている。収益は大きく改善しているが、雇用過剰感は残っており、高騰する原材料価格をどこまで消費者に価格転嫁できるか、という問題も出てきている。それでも全体としては当面は楽観的な見方が支配しそうな状況であるといえよう。

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  日銀短観の発表を待ちきれなかったのが、ドル円市場。31日には輸出企業のほか、改善が見込まれる短観発表を材料に投機筋からのドル売り円買いが活発化し、105円をついに突破してしまった。104円台、103円台では損失覚悟のドル売りも大量に出され、円はほぼ4年ぶりの高値である103円40銭を記録した。特に介入が実施された形跡もなかったことも、円高が進みやすい状況を作ったようだ。財務省による介入は3月5日以来目立ったものは観測されておらず、今回の105円突破で、従来のような積極的な介入は当面行われそうもないことが確認できた格好となった。

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  一方米国では、2日に注目の雇用統計(3月分)が発表された。米国のマクロ経済指標は経済が堅調に推移していることを示していたが、なかなか雇用が伸びず、それがネックになっていた。先月5日に発表された2月の雇用統計では、非農業部門の雇用者増加数がわずか21000人増にとどまり、米国の企業がグローバルにアウトソーシングを拡大しすぎているのが問題と指摘されていた。

  しかし、3月の雇用統計はこれまでの統計がウソのように思えるほど、予想を遥かに上回る結果となっている。最も注目される非農業部門の雇用者増加数は308千人増となり、予想の2.5倍となった。2月の増加数も21千人増から46千人増へ、1月のそれは97千人増から159千人増へ、いずれも上方修正されている。これによってFEDによる利上げは俄然現実味を帯びてきたことになる。あとはグリーンスパン議長の“政治的判断”を待つだけと言えそうだ。

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  もしFRBが引締めに動き出すと、長らく続いてきたドル安トレンドにも変化が訪れるのであろうか。上は貿易加重でみたドルインデックスの推移。95年から上昇傾向にあったドルは2002年初にピークを打ち、以来今日までドル安が続いている。現在95近辺までインデックスは下落しており、今のところは歯止めがかかっていない状況だ。利上げは基本的にはドル高要因であり、今後はこれまでの長期トレンドに多少変化が生じてくるかもしれない。しかし対円については、まだまだ微妙な情勢だと言えるだろう。

  米景気が好調だとういうことは、とりもなおさず日本経済も好調ということであり、経常黒字は一段と増加する可能性が高まるからだ。ドル円が大底を打ち、反転に向かうのはもう少し先の話になりそうだ。

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  海外の投資家を中心に日本経済に対する期待は非常に強く、日本株が堅調に推移する限り、この勢いは当面おさまりそうもない。しかし①100円が強い心理的抵抗線となっていること、②3月の高値112円30銭からの下落が急ピッチであること、③雇用統計が大幅改善したことから米利上げの可能性がたかまったこと等から目先はドルが堅調に推移しそうだ。だが、中期的には1ドル100円割れの可能性は依然残ると見ておいてほうが良かろう。財務省がこれまでの積極介入を止めたことも、円高になりやすい素地を作ったと言えよう。

  G-SECインデックス(市場アンケート。米雇用統計発表前に実施)速報は25.0と円高を見込む参加者が優勢。105円を切ったことで、さらなるドル安円高を見込む向きが増えた。