2004年 1月31日の放送

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  為替市場が注目するG7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)がいよいよ来週開催される。前回9月のドバイG7では、“More Flexibility in exchange rate is desirable(さらなる柔軟性が望ましい).”の一文が市場を震撼させ、その後の円高・ユーロ高に大きくつながった。その前哨戦であるG7D(財務次官級会合)が今月26日に行われている。内容については知る由もないが、この“Flexibility”という、特に日欧にとって厄介な表現をどう変更するかでもめたことは想像に難くない。

  前回の声明文で為替に関するくだりは上記の3点に集約される。あらためて見直すと、経済ファンダメンタルズの反映はいいとしても(それも主観的な問題だが)、日米欧がそれぞれバラバラに為替市場を注視している今のような状態では、到底“適切に協力”している状態にあるとは言えないことがわかる。ただし、物議をかもした“柔軟性”という表現は今回は他の言葉に代替される可能性が大きい。

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  しかしだからといって、今回のG7で大きな前進があるかと問われれば、それはNOに近いだろう。各地域の立場は上記のように明確であり、安易に妥協点が見つかる立場の違いではない。特に無視できないのが、ドル安のメリットを米国が最大限享受しているという点にある。

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  ドバイG7直前のドル円レートは114円、ユーロドルは1.1370だったから、円は7.5%、ユーロは9.1%それぞれ上昇したことになるが、米国にとっては一体これのどこが問題なのか、という認識であろう。上のグラフは貿易加重平均の米ドルインデックス推移とダウジョーンズ株価の昨年の推移だ。ドル安の恩恵を受け、米国輸出企業の収益は改善し、株価全体の押し上げに大きな貢献をしていることがわかる。資産効果による個人消費の活発化も期待でき、米政府にとっては“秩序あるドル安”は大歓迎だ。

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  また他国から指摘されてきた貿易赤字も上のグラフのように改善傾向にある。1月に発表された昨年11月の米貿易赤字は380億ドルの赤字(国際収支ベース、季節調整済み)と前月の416億ドルの赤字から大きく減少した。なんといっても、輸出が前月比で3%近い伸びを示したことが大きい。これにより、米貿易赤字はピークを打ったとの見方も出ている。

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  メリットはまだある。上は本邦当局の外貨証券保有残高推移。活発な介入により、2002年12月末は4514億ドルに過ぎなかったものが、昨年末には5259億ドルへ増加、ざっと8兆円(106円換算)増えている(注)。全てが米ドルという訳ではないにしても、財政赤字に悩む米国にとって資金の安定供給先があるということは、大きなメリットであると言えよう。このように様々なメリットをもたらす“秩序あるドル安”を米政府がそう簡単に手放すことはないだろう。
 (注)外貨準備残高全体では21兆円強増えているが、残りは邦銀や外銀への預金となって運用されている。

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  もっとも、金融政策の面からはドル高になりうる材料が今週ひとつ出ている。米FRBは27日から28日にかけてFOMC(連邦公開市場委員会)を開催、金融関係者に注目されていた“considerable period”という表現が姿を消した。これにより、利上げ実施懸念から債券は急落(金利は上昇)、株価も下落する展開となった。 為替市場でも“利上げ通貨”としてのドルに買いが集まり、ユーロは下落に向かった。依然他通貨に対し低金利にとどまっているドルではあるが、今回の声明文はとりあえずドルの下支え要因にはなりそうだ。

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  ユーロの対ドルの動きが激しい。1月のドイツIFO景況指数が3年ぶりの高水準に達したことで、ユーロは一時1.2650ドル近辺まで上昇したものの、FOMC声明で反落、現在(27日午後5時)1.24前後で取引されている。

  ユーロの今後の動きについては見方が分かれており、1.29近辺で大天井を打ったとの意見と、再度ユーロ高に向かうとの意見があるようだ。しかし今ところユーロ売りドル買いがやや優勢な感もあり、短期的には当面のユーロの底値を探る動きが続きそうだ。ドル円は固定相場のように動かなくなっているが、円安方向への動きは考えにくく、ドルじり安の展開が続くと思われる。  G-SECインデックス速報は31.2とドル安円高派が優勢。