2003年 11月1日の放送

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  高い高いと噂されていた米GDP7-9月期の成長率が30日に発表された。フタを開けてみると、強気のエコノミストもびっくりの高成長で季節調整済み年率換算(以下同じ)で、なんと7.2%である。上は80年第1四半期以降のGDP成長率推移。上に示す23年余(95四半期)のうち、7%超の成長を記録した四半期は今回を含めても9回しかない。
  しかも大半が高インフレ時代の80年代前半に集中しており、85年以降ではわずかに2回(87年第4四半期とITバブルで沸いた99年第4四半期。いずれも7.1%の成長)記録されただけである。ブッシュ政権による大幅減税や、グリーンスパン議長による40年ぶりの低金利の実現などが大きく寄与した格好となっている。  

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  部門別にみても総じて伸び率が高い。なかでも住宅投資は20.4%と爆発的な伸び率を示している。もともと米国の住宅投資部門は成長率の変動が激しい部門だが、それでも90年以降に20%を超える伸び率を示現したことは過去4回しかない。今回は96年第2四半期以来の高成長だ。米国のベビーブーマー(46年〜64年生まれの約7600万人)世代を中心とした住宅購買意欲は依然旺盛なようである。
  また、注目されていた設備投資も大きく復活したことで、エコノミストの間でも米景気楽観論が広がっている。もともとITバブル崩壊後低迷していた設備投資がいつ本格的にカムバックしてくるか、という点が注目されていたが、4-6月期の7.3%成長に続き今回も設備投資が高い伸びを示したことで、来年は今年以上の成長をするとの見方に一段と拍車がかかりそうである。

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  さて、そうなると現在の低金利政策はいつまで続けられるのか、ということが市場ではこれから大問題になりそうだ。上は80年以降のGDPデフレーター(前年比)とFFレートの推移だが、7%超の高度成長が当たり前だった83年半ばから84年前半の期間を見ると、FF金利はなんと9%前後で推移している。あの頃はデフレーターが3%台後半から4%台前半と高く(現在は1.7%)、インフレ懸念がまだまだ根強かった時代だから、単純に当時のケースを当てはめることはできない。しかし、それでもFF金利が1%というのはあまりにも低すぎるという議論がいずれ台頭してこよう。

  先日の連邦市場委員会(FOMC)後の声明で見られたように、FRBは依然デフレリスクを言及しており、今のところ利上げを考えることは現実的ではない。エコノミストの間でも、来年半ばごろまでは利上げはない、との見方が主流である。当面はそれで良しとしても、あまりそのような見方に甘えると、投資家は思わぬところで足をすくわれるかも知れないことに注意したい。

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  30日にはもうひとつのビッグイベントがあった。スノー米財務長官による「為替政策報告」である。米国には包括貿易競争法というものがあり、もし米国が貿易相手国を“為替相場を操作している国”と認定した場合、政府は為替制度の改革へ向けて相手国と交渉を開始せねばならないことを規定している。
  過去そのような認定を受けた国は94年の中国以外いないようだが(Bloomberg)、市場は日本が指名されることを懸念、一段のドル売り円買いに備えたのである。日本の当局もこの動きを警戒し、すでに議会証言前から108円近辺でドル買い円売り介入をしていたとの噂もあり、スノー氏の議会証言後の市場の動きが注目されていた。

  しかし結果は、日本だけでなく中国も“為替相場操作をしている国”としては認定されず、無難なものにとどまっている。どうやら、法律に基づいた強硬手段で為替レートを調整するのではなく、多少時間はかかっても外交により徐々に調整をはかることでドルの急落を避ける、というのが米国の方針と言えるようだ。特に中国に対しては、ペグ制度の廃止を要求しつつも、「ただちに変更すれば、同国の経済全般に打撃」と報告書で述べており、柔軟な調整を求めるソフトなものになっている。

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  24日(金)の海外市場は109円79銭で取引開始。しかし110円近辺ではドル売り強く、その後はドルじり安の展開となり、結局109円25銭で越週した。
  27日(月)の東京市場は108円95銭でオープンしたが、日本株の上昇などを受け、ドル売り円買いが進みやすい展開となった。海外では、対ユーロでドル売りが強まったことから、ドルは対円でも値を下げ、結局108円52銭で引けた。28日(火)の東京市場は108円台半ばで始まるも、輸出筋のドル売りにドル安円高が進んだ。海外は、108円台前半での小動き。
  29日(水)の東京市場は108円を挟んだ神経質な展開。一時107円88銭までドルは下落するも、介入警戒感から再度108円台に乗せて引けた。海外は同水準でのもみ合いが続き、引けは108円32銭。30日(木)の東京市場は108円台前半での小動き。海外では、米GDPが予想より強い数字となったこと、スノー財務長官が日本の為替操作を否定したこと、などからドル買戻しが強まり、108円74銭で引けた。31日(金)の東京市場は108円台後半でのもみ合いとなっている。

  注目されたスノー財務長官の議会証言も終わり、しばらくは手がかり材料難となりそう。ドルの頭は重いものの、108円を割り込む局面では当局が積極的に介入を行うとの思惑もあり、目先は動きづらい展開が続きそうである。

  G-SECインデックス速報は62.5とひさしぶりに50を上回り、ドル高円安予想が優勢になった。スノー財務長官が日本にフレンドリーな発言をしたことで、介入が強まるとの見方が出ている。