2003年 6月28日の放送

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  FOMCは年に8回行われるが、開催前から結果をアレコレと推測するのは、通常は金融のプロだけである。一般の日本人がその内容を知るのは大体翌日の夕刊か、何も政策に変更がなければ、知らないまま終わる。ところが今回のFOMCは随分と注目された。金利の引き下げ決定は朝7時のNHKニュースでトップに取り上げられたし、FOMC開催前も、利下げ幅が25BPなのか50BPなのかが注目されている、として一般のニュースで取り上げていた。

  これほどまでに注目された背景は、珍しくFEDの緩和幅が見通しにくかった上、もし50BP引き下げればFF金利は0%台に突入し、米短期金利が日本と似たような状況になるからであろう。また、デフレが日本だけに止まらないグローバルなリスクになっており、経済大国アメリカですら無視できないものになっていることを、グリーンスパン議長が公に認めたことも大きく影響している。

  しかしフタを開けてみると、意外と強気の内容だったとも言える。景気の先行きについて、「上昇も下降も同程度の確率」としたのは前回のFOMC声明文と同じだが、「ただし景気改善の時期や程度は依然不透明・・」という但し書きの部分が今回は消えた。引き下げ幅が25BPにとどまったこともあり、“デフレ期待”で盛り上がっていた債券市場は大荒れ(金利は急騰)になってしまった。

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  債券関係者は悲観的なシナリオを組み立て、楽観的に債券を買っていたが、エコノミストは逆に楽観的なシナリオを立てている。上の表はフィラデルフィア連銀が定期的に行っている景気予測のアンケートを要約したもの(5月20日発表分)。年後半については極めて楽観的に見ていることがわかる。基本的には金融緩和・ドル安・大規模減税の3点セットが景気浮揚に効かないはずはない、ということであろう。それにしても、もしこのようなシナリオが示現したら、債券市場の調整は今週程度のものでは済まされないだろう。

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  今後の米景気回復を占うに当たって、まず注目されるのは設備投資の動向である。上はGDP統計における設備投資額推移(四半期毎、紺色の点で示してある)と、その先行指標とされる耐久財受注金額の推移(オレンジの棒グラフ)。経済学の教えでは、金利を下げれば設備投資は回復するはずであるが、上のグラフは見ると依然として低迷したままにあることがわかる。むしろ株価の崩落とともに設備投資はピークを打っていることを考えると、バブル期の日本企業よろしく、 米企業も98年から2000年にかけてかなり設備投資を実施してしまったようだ。NYダウは1年ぶりに9000ドル台に乗せているが、設備投資が株価並みに力強く復活すれば、エコノミスト予想も一歩現実に近づきそうだ。

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  一方、金利の低下に過剰なほど敏感に反応しているのが、米住宅業界。株価が大天井を打って以来、金利はこの3年間ほどで下げに下げてきた。6%台後半にあった10年物債券利回りは、今やその半分しかない。このため住宅販売は、特にこの1年間、未曾有の活況を呈している。5月の新築住宅販売戸数は、115万7000戸(季節調整済み、年率換算)の過去最高販売を記録、今のところとどまるところを知らぬ勢いだ。

  金利に支えられている活況だから、あまりに景気が回復して米金利が高騰すると、今度は住宅セクターが崩落するリスクが出てくる。この辺がグリーンスパン議長の頭の痛いところだが、とりあえず、目先は楽観的で良い、ということか。

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  20日(金)の海外市場は118円台前半でのもみ合いが続いた。引けは118円40銭。23日(月)の東京市場は118円55銭でオープン。FRBの利下げ観測からドル売り先行となり、118円台前半にドルは下落。海外ではNYダウが下落したことからドルは続落し、117円75銭で引けた。24日(火)の東京市場は117円台後半でのもみ合いが続いた。海外も動意薄となり、117円90銭で引けた。25日(水)の東京市場は118円02銭でオープン。その後はFOMCを控えポジション調整のドル売りが入り、117円台半ばへドルは下落。海外ではFRBが25BPの利下げに留めたことでドル買いが入り、118円ちょうどで引けた。26日(木)の東京市場は118円台前半の小動き。海外では、米景気回復期待などから、欧州市場でドルが大きく買われる展開となった。NY市場でも米系ファンドなどがドル買いを進め、結局119円40銭で引けた。27日(金)の東京市場は119円台半ばでのもみ合いとなっている。

  動意の薄い展開が続いていたドル円だが、26日の海外で久しぶりに大きな動きを見せた。FOMC後は、徐々に各国の景気に眼が移り、年後半の景気回復に期待がかかるドル買いが徐々に強まっているようだ。円高局面では財務省が依然強力な介入姿勢を示していることから、投機筋も円安局面なら仕掛けやすいと思われ、目先はドルがやや堅調に推移する展開か。120円をうまくクリアできればドルもはずみがつきそうだが・・・。  G-SECインデックス速報は63.6となり、さすがに前回よりダウンとなったが、依然円安センチメントが強い。