2003年 6月7日の放送

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  1日から始まったエビアン・サミットが終了した。最重要人物であるブッシュ米大統領が、2日目の途中でエジプトに発ったことで、サミットの重要性の低下が指摘された会合となった。米国大統領のサミット滞在時間は、歴代でブッシュ氏が一番短かったという。実際、サミットでの討議内容よりも、シャロン・イスラエル首相、アッバス・パレスチナ自治政府首相とブッシュ大統領との3者会談の内容のほうが、はるかにニュースバリューが高かったと思われる。
  それでもサミットでは、為替やデフレの問題についての言及があった。為替はわざわざブッシュ大統領自らが、「米国の強いドル政策は維持」と述べ、ドル安政策への転換という市場の憶測を否定した。しかし一方で、「為替相場は市場が決めること」とも述べ、協調介入の可能性は否定された。また一部で、ブッシュ大統領が「ドルはグリーンスパン議長が決めること」と語ったと噂されており、ドル高維持発言の真意は不透明なままとなっている。
  デフレについては、先月のグリーンスパン議長発言もあり、欧米が「デフレの先輩」である日本に敬意を表した(?)格好となった。デフレ問題は明らかに世界共通の懸念問題に格上げされており、各国中央銀行は当面効果的な金融緩和の推進が課題となる。

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  そのような環境下、ECBは早速今週5日の理事会で3ヶ月ぶりの利下げに動いた。政策金利である2週間物レポ金利は2.5%から2%へ引き下げられ、ユーロ圏発足以来最低の金利水準となった。こと金利に関しては“史上最低”とか“40年ぶり”という形容詞もすっかり新味がなくなってしまった感があり、それだけインフレと言う言葉が死語になりつつあるということか。
  上のグラフはユーロ圏のGDP(四半期毎前年比)とCPI(消費者物価指数)、政策金利の2000年以降の推移を示したもの。インフレ率は横ばいだが、 ECBのドイセンベルグ総裁は、ユーロ高要因などで今後は大幅に低下すると述べている。GDPは徐々に伸びが鈍化しており、今年の成長率見込みはせいぜい1%だという。ECBはグリーンスパン議長ほど危機感を述べていないが、安定協定の下、機動的な財政政策は期待できず、このままズルズルと金利を下げ続ける可能性はまだ残っている。

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  欧州や米国の短期金利が、歴史的に見てもかなりの低水準に低下してきたため、今後は量的緩和策の行方も一段と注目されることになろう。
  上のグラフは、日・米・ユーロの各中央銀行によるベースマネーの前年比伸び率推移。ユーロは、昨年現金通貨の入れ替え作業があったため、前年比マイナスが続いていたが、今年に入ってからは急速に伸びてきており、3月は14.9%、4月は17.3%の伸びとなっている。日本は昨年4月にかけて36.3%まで伸びたが、その後は今年3月にかけて伸び率は鈍化した。しかし福井新総裁がはやばやと追加の量的緩和策を決めたため、ベースマネー伸び率は再び上昇してきている。米国は、このところ7%前後で安定した伸びとなっており、今のところは短期金利の引き下げが金融政策の中心になっている。しかし最近はグリーンスパン議長がデフレ懸念発言を連発しており、金融市場では中長期の金利もかなり下がってきている。

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  このような一連の金融緩和努力は、徐々にリスク資産への資金流入を促し始めている。上のグラフは、産業セクター別に見た米国の5年物社債スプレッド(5年物米国債に対する社債金利の上乗せ幅)推移。今年以降徐々に低下傾向が続いており、特に5月上旬にグリーンスパン議長がデフレ懸念発言をした時、スプレッドは一時急落した(Data:Bloomberg)。
  日本でも社債スプレッドが低下してきており、今後このようなリスク資産への資金流入が定着し、それが景気浮揚につながるかが大いに注目されるところとなろう。米国でも、低金利にもかかわらず、企業のCEOが景気の先行きに悲観的なことが設備投資を抑制している。各国中央銀行の悩みはまだしばらく続きそうである。

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  30日(金)の海外市場は118円台前半で寄付き後、米系ファンドを中心とする大口のドル買いに119円台へ上伸。ストップロスのドル買いも巻き込み、一時119円64銭まで買われた。引けは119円35銭。
  2日(月)の東京市場は119円34銭でオープン。その後は実需筋のドル売りにドルじり安の展開。海外ではユーロ売り円買いの動きが出て、ドルは対円でも値を下げ、118円65銭で引けた。 3日(火)の東京市場は118円代後半で動意の乏しい展開。海外では、サミットでドル安懸念を共有したとの思惑からドルが買われ、119円15銭で引けた。4日(水)の東京市場は119円台前半で寄付き後、実需のドル売りに118円台半ばまで下落。海外では、118円台後半でのもみ合いが続いた。
  5日(木)の東京市場は118円85銭でオープン、その後は対ユーロで円高となったことから、対ドルでも円高地合いとなった。海外では、ECBが利下げを実施したが、折込済みで反応薄。逆にユーロ売り材料出尽くしで、ユーロ買いドル売りが優勢となったため、ドルは対円でも売られ、117円70銭で引けた。6日(金)の東京市場は117円台後半でのもみ合いとなっている。
  サミット、ECBの利下げと材料を消化し、ドル円も一服と言ったところ。最近は、115円より円高はないとの見方から、ドル買い円売りのポジションを大きく積上げる投機筋の動きも出ているようだ。財務省の強力なドル買い介入が、一部の市場参加者に安心感を与えている。
  G-SECインデックス速報は中立である50は上回ったが前回(61.4)よりは大幅ダウン。上記レンジのどちらかを抜けるまでは見通しにくいようだ。