2003年 4月19日の放送

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  このところユーロの堅調ぶりが目立っている。対円では、ほぼ4年ぶりに130円を突破し、大きく息を吹き返している。132円50銭でスタートしたユーロは、99年1月4日の初商いで135円49銭まで上昇したものの(Data:Bloomberg)、その後買いは続かず、2000年にかけて下がり続けた。予想外にユーロから米国への資金流出が多かったのが主因だが、本邦輸出企業を苦しめたユーロ安もひさびさ130円台に乗せた。ユーロの景況感はあまり改善されていないが、ポートフォリオ調整に基づくユーロ買いや、イラク情勢にからむブッシュ政権の対応を見て、徐々にドル離れが起きていることも影響しているように思われる。

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  資金の流れもだいぶ変わってきた。国際収支の主要勘定を見ると赤字基調から黒字基調に変化してきていることがわかる。経常収支(青色)は99年から3年連続赤字だったが、昨年(2002年)は620億ユーロの黒字に転化している。直接投資は99年に1200億ユーロ、01年に1000億ユーロの大幅な資金流出が見られたが、昨年は210億ユーロの赤字に縮小した。証券投資も、2000年に1150億ユーロの資金流出を記録したが、01年、02年と2年連続して黒字(資金流入超)となっている。このような資金の流れの変化が、ユーロ高に向かわせている。

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  このような環境下、EU首脳会議が16日午前、アテネで開かれた。上に示すように現在15カ国から成っている欧州連合も、来年5月にはさらに10ヶ国が加盟、合計25カ国になることが決まった。現在のEUのメンバーでユーロに加盟していないのは、イギリス・スェーデン・デンマークの3カ国だけだが、いずれはこれら全てがユーロ圏を形成することなり、世界経済に大きな影響力を持つこととなろう。
  上のグラフは最近3年間の日本、米国、ユーロ圏、EUのGDP推移(95年価格。Data:OECD)。EUのGDPはすでに10兆ドルを超える規模になっているが、今後はチェコ・ハンガリー・ポーランド・スロバキアなどが加わり、さらに3000億ドル以上GDPが増える見込みだ。

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  このような動きは為替レートへも大きな影響を与えることになろう。上のグラフは、最近2年半の日本とEU諸国との貿易におけるユーロ建て取引シェアの推移(Data:財務省)。ユーロのシェアは着実に上昇しており、特に日本からEUへの輸出取引において顕著である。
  さらに詳しく他通貨との関連において見ると、2000年下期から2002年下期にかけて、ユーロ建て輸出比率は44.2%から53.5%へ約9ポイント上昇する一方、円建てのシェアは33.5%から28.5%へ5ポイント低下した。米ドルも13.0%から10.4%へ低下している。日本への輸入取引は、ユーロではなく円建て取引が一番多い。シェアは50%前後を占めており、あまり大きな変化は見られない。ユーロ建ての輸入は17.0%から31.0%へ大きく伸びる一方、ドル建て輸入取引が17.5%から13.4%へ落ちている。
  今回のEUの決定は、上記のような傾向を中長期的には助長することになる。ひょっとすると、通貨ユーロの“反撃”はまだ始まったばかり、と言えるかも知れない。

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  11日(金)の海外市場は119円台後半で始まり、米小売売上高指標が市場より良かったことからドルが買われ、120円台半ばに上昇して越週した。引けは120円50銭。
  14日(月)の東京市場は120円60銭でオープン、その後同レベルでのもみ合いが続いた。海外は輸出筋のドル売りなどで若干軟化、120円30銭で引けた。
  15日(火)の東京市場は120円36銭で取引開始、120円台前半での小動きに終始した。海外では、米鉱工業生産(3月)が予想を下回ったことからドルの頭はやや重く、120円25銭で引けた。
  16日(水)の東京市場は120円台前半で寄付き後、手がかり材料難の中、小動きに終始。海外では、NYダウが下げ幅を拡大したため、損失覚悟のドル売りが出始め、ドルは大きく下落。結局119円55銭で引けた。
  17日(木)の東京市場はユーロが対ドルで上伸したことから、円も買われ、一時119円割れまでドルは売られた。しかし海外に入ると、米フィラデルフィア連銀指数が予想より良かったことから、ドルの買戻しが進み、119円60銭で引けた。
  18日(金)の東京市場は、119円台後半のもみ合いとなっている。
  ドル円は引き続き動意に乏しい展開となっている。水曜日の急落で、一部ロスカットのドル売りも出たが、NY市場がイースター休暇に入ったこともあり、その後はまた静かな動きとなった。ドルに対する見方は交錯しており、先が読みづらい展開。輸出企業のドル売り予約がかなり進んでいるため、これ以上ドルは下げにくいとの見方もある一方、ユーロの続伸に見られるように“ドル離れ”を懸念する声も根強い。中期的には一段のドル下落の可能性が残っていると思われる。
  G-SECインデックス速報は39.3と低下。来週については、市場参加者はやや円高方向を見ている。