2003年 2月1日の放送

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  ブッシュ米大統領は28日夜、上下両院合同会議で一般教書演説を行った。スピーチは前半1/2が国内経済政策中心、後半が注目されたテロに関する部分で構成されている。前半部分は(1)完全雇用を達成するための経済の構築、(2)高品質の医療提供、(3)エネルギー自給率の向上などに言及、特に冒頭は不透明感が漂っている経済を強力な減税政策で浮上させる決意を伝える内容になっている。

  だが、後半部分はテロとの戦いに対して断固たる態度で臨む決意を伝えるものだ。特にイラクに対しては後半のかなりの部分を費やして激しく非難、抗議している。過去12年間いかにイラクが他国を欺いてきたか、約束を守らなかったか、などについて、具体例を挙げながら批判している。やっぱりブッシュ大統領は本気なのである。

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  ブッシュの演説により、イラク攻撃の可能性は極めて高いことが再確認された格好となったものの、攻撃の時期やその後の各国景気への影響、原油価格の行方などは依然不透明なままである。このため、株式市場は頭の重い展開が続いている。上は昨年1月からの動きを追ったもの。昨年初、予想以上に力強い景気回復を受け10500ドル近辺まで上昇したNYダウもその後企業会計不信などから大きく下落、低迷した状態が続いている。ブッシュ政権は大幅な減税政策により内需の拡大に努めているが、残念ながら株式市場の反応は鈍いままだ。

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  また通貨の下落も続いている。上のグラフは、イングランド銀行が発表している貿易加重平均のドルインデックス推移。これを見ると対ユーロや対円だけでなく、主要貿易相手国通貨全体に対して、ドルの価値が上がっているのか下がっているのかがわかる。グラフを見ると、95年以降ドルは基本的に上昇過程にあったものの、株価同様、昨年初めに125でピークをつけた後、下落基調にある。資本の調達を海外に頼る米国にとってドル安の進行は重大な問題であり、スノー新財務官もさっそく“強いドルを支持する”と明言している。通貨安の理由の一つは不透明なイラク情勢であり、市場は明らかにイラクとの戦争を嫌がっている。ブッシュ政権にとって“テロとの戦い”とは、“マーケットとの戦い”でもあるようだ。

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  そのような中で、30日に注目された2002年第4四半期米GDPのデータが発表された。季節調整済み前期比年率のGDP伸び率はプラス0.7%と市場の予想(1%前後)を下回り、景気の鈍化を裏付ける内容となった。特に個人消費は第3四半期のプラス4.2%から1%へ大きくダウン、家計部門の負債が積み上がっていることを考えると、今後の先行きを大いに懸念させるものとなった。民間住宅投資はプラス6.8%と前期のプラス1.1%から大きく伸長したものの、民間設備投資はプラス1.5%の伸びにとどまっている。

  財政金融政策を全開させて景気浮揚策に全力を尽くすブッシュ政権だが、どうやらイラク問題の早期解決が一連の経済刺激策の“最後の仕上げ”として不可欠なようだ。

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  24日(金)の海外市場はユーロ買いドル売りの動きが強まったことや、米株の下落などを背景にドル安円高基調となったが、介入への警戒感も強く、結局117円80銭で越週した。

  27日(月)の東京市場は117円85銭で取引開始後、117円台後半での静かな動きが続いた。海外では、イラクの大量破壊兵器に関する国連査察団の報告書提出を前にドル売りが強まり、一時117円台半ばまでドルは下落。しかし報告後はドルの買い戻しが強まり、結局118円50銭で引けた。

  28日(火)の東京市場は118円58銭でオープン。その後はスノー米次期財務官の公聴会等を控え様子見気分が広がり、118円台半ばを挟んで小動きが続いた。海外では、注目のスノー氏が「強いドルを支持」との発言をしたが反応は限定的となった。引けは118円65銭。

  29日(水)の東京市場は118円70銭で寄付き後、ブッシュ米大統領の一般教書演説を前に海外から大口のドル売りが入り、118円台前半までドルは下落した。海外では一時117円台に突入したものの、その後はFOMCを控えドル売りに慎重な動きが広がり、結局118円35銭で引けた。

  30日(木)の東京市場は118円62銭で寄付き後、前日のFOMCにおいて地政学的リスクが消滅した場合の米国経済に対して楽観的な見方が示された流れを受け、ドル買いが優勢となった。海外でも米がフセイン大統領の亡命を支援するとの報道などからドルは続伸、一時119円台半ばまで上昇する展開となった。しかし引けにかけては伸び悩み、結局119円07銭で引けた。

  31日(金)の東京市場は119円はさんだ小動きとなっている。

  今週は日銀の覆面介入の噂で持ちきりだった。真相はわからないが、市場では目先一段の円高は難しいと見て、ドルの買戻しが進んだ。投機筋を中心としたドル売りポジションの調整がまだ終わっていないこともあり、一部には目先ドルは120円台に乗せるとの見方も出ているようだ。しかし米経済の減速感は高まっており、ドルの本格上昇は難しいように見える。

  市場の見方は揺れている。前回はかなり円高を見込む向きが増えていたが、今回は逆にドル高円安を見込む向きが大勢を占めた。