2002年 6月1日の放送

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  このところ米国株は頭の重い展開が続いている。上のグラフは最近1年間のNYダウの動き。9月の米同時テロ事件以降、今年3月までは比較的堅調に推移してきたが、4月からやや不安定な動きが続いている。
  基本的な背景の第一は、高すぎた企業収益期待に対する修正の動きが出ていることである。例えば、S&P500種を構成する500社の第1四半期決算は、前年同期比マイナス12%に終わり、事前予想を大きく下回った。背景の第二は、チェイニー米副大統領が、米国に対する新たなテロ攻撃がほぼ確実にある、との見方を示したことである。このため、企業の収益回復が遅れるとの見方が広がっている。第三は、エンロン事件以来、企業会計に対する不信が高まっていることである。例えば、IBMの株は4月に急落したが、きっかけはSEC(米証券取引委員会)が2月から同社の財務諸表調査に乗り出した、と報じられたことがきっかけである。

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  米株がもたついていることもあり、為替市場ではドル売り円買い・ユーロ買いが進んでいる。投資家の動きにも変化が現れてきているのだろうか。
  上のグラフは、ユーロ圏の国際収支状況のなかから、経常収支と投資収支のうちの証券投資をピックアップしたもの。29日に発表されたデータによると、今年3月の経常収支は37億ユーロの黒字となり、2月(21億ユーロの黒字)に続き堅調な動きを示している。最近5ヶ月の動きをみても、1月に一度15億ユーロの資金流出超となっただけで、その他の月は安定して20〜30億ユーロの黒字を計上してきている。
  一方、投資収支のうちの証券投資動向を見ると、3月は81億ユーロの資金流入超に転じていることがわかる。81億ユーロのうち、42億ユーロが株式、39億ユーロが債券への資金流入となっており、投資家の資産アロケーションもどうやらユーロに向かい始めているようだ。

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  このようにユーロへ資金が流入する背景としては、ユーロ現金の流通も問題なく始まり、先行きの経済成長に対する期待が高まっている点が挙げられよう。上のグラフは、ユーロ圏のGDP推移(季節調整済み前期比)。2000年以降、GDP伸び率は低迷していたが、今年第1四半期(1-3月期)の伸び率はプラス0.2%となり、昨年第4四半期のマイナス成長から脱している。伸び率はまだ低いものの、ECB理事のイッシング(主任エコノミスト)は、「ユーロ圏の景気回復は始まっており、景気の谷は通り過ぎた」と述べている。

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  また、ドイツの景況感も回復してきている。ドイツのIFO経済研究所が27日に発表した5月の景況感指数(旧西ドイツ地域分、91年=100、季節調整済み)は、91.5となり、前月から改善している。IFOによると、特に製造業と卸売業セクターからの回答が良かったという。また、先行きの景気見通しをベースとした期待指数のほうも、106.1となり、昨年から大幅に改善してきている。

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  24日(金)の海外市場は、輸出企業のドル売りと当局のドル買いが警戒され、動きづらい展開となった。125円前後でのもみ合いが続き、引けは124円65銭。27日(月)はNY市場休場ということもあり、終日静かな展開。124円台後半での取引が続いた。ロンドン市場の引けは124円90銭。28日(火)は124円83銭で寄り付くも、本邦実需筋や海外投資家の売りにドルじり安の展開。米株が軟化したこともあり、海外でもドルの頭は重く、124円60銭で引けた。29日(水)は124円台半ばでオープン、海外市場も含めて124円台でのもみ合いが続いた。資金はユーロに流れており、ユーロは対ドルで0.93を上抜けし、8ヶ月ぶりの高値をつけた。ドル円の海外の引けは124円45銭。30日(木)の東京市場は124円台前半で寄付き後、膠着状態が続いた。海外に入ると、速水日銀総裁が「為替相場は市場に任せる」と発言したとの報道にドル売りが活発化し、123円台前半まで下落した。さらに米国株が軟調に推移したこともあり、一時122円82銭までドルは売り込まれたが、その後はドル買戻しが優勢となり、123円40銭で引けた。31日(金)の東京市場は、123円台前半でのもみ合いが続いていたが、午後3時ごろに当局が介入を実施、一気に124円半ばまでドルは急騰、その後123円80銭前後での推移となっている。ムーディーズが日本国債の格下げを実施したが、為替では大きな影響は見られていない。

  一時的にせよ、123円を割り込んだことで、市場は今後一段と神経質な動きとなろう。需給的には、本邦輸出企業のドル売りが今後もドルの頭を抑える形となる。輸出予約は今後一段と活発化する見込みであり、ドルの本格的反転は見込みにくい。海外投資家からの日本株買いもコンスタントに入っており、円買い需要は根強いものがあると思われる。一方金融当局は、豊富な資金をバックに、今後も断続的にドル買い円売り介入を続けよう。現状からさらなる円高局面では、介入金額を一段と増やす可能性が高い。上記レンジ内での神経質な展開を予想する。
  G-SECドル円指数(31日、速報値)は54.2となり、前回より若干の下落。122円台までドルが売られたことで、さらなる円高を見込む向きも出てきている。逆にドル高を予想する参加者は、介入が拠り所となっている。