2001年6月2日放送 マーケット・ナビのポイント

1. 日経平均株価指数
グラフは3月以降の日経平均の推移。3月の中旬に11,000円台をつけたが、その後、実質ゼロ金利政策の復活、構造改革進展への期待、小泉内閣人気等の追い風を受け、5月の上旬には14,500円を越えるまで上伸した。しかしながら、ピークをつけた後は株価は弱含みに転じ、足許13,500円を割り込んでいる。外国人は5月の第4週まで10週連続で日本株を買い越しているものの、軟調に推移している背景には、(1)小泉内閣の志向している構造改革の中身が次第に見えてくるに連れ、追加的なデフレ圧力への懸念が台頭しつつあること、(2)最近の米国の経済指標が硬軟混在となってきていることに対し、本邦のそれは更なる景気後退を示唆するものとなっていること、等があげられる。後者については、最近のものでは、29日(火)に発表された4月の鉱工業生産指数が前月比▲1.7%、前年同月比▲3.9%と大きく下落したほか、同日発表の4月の自動車輸出台数が前年同月比▲13.4%、31日(木)発表の4月の住宅着工と建設受注が前年同月比でそれぞれ▲7.2%、▲12.3%と落ち込んだことが注目された。

2. 鉱工業生産指数(日本)
前述のように、29日(火)発表の4月の鉱工業生産指数(速報)は、前月比▲1.7%(市場予想中心同▲1.0%)、前年同月比▲3.9%と大きく下落した。米景気後退を契機とした、昨秋秋以降の輸出急減が引鉄となって、同指数は下降トレンドを強めている。前年同月比ベースの▲3.9%は98年の景気の底である▲10%前後には及ばないが、同時に発表された5月、6月の予測指数はそれぞれ▲2.1%、▲7.0%となっており、今年の中盤にかけて更に景気が落ち込むことはほぼ確実な勢いである。

在庫指数も悪化(上昇)している。今年第1四半期の鉱工業在庫は前期比+2.3%で、4月の速報値は前月比+2.1%となった。前月比+2%超は、95年2月の円高や阪神大震災で生産が大きく調整をしたとき以来。米国が今年の第1四半期に大幅に在庫を圧縮し、特にハイテク・セクターにおいては在庫調整を終わりつつあるのに対し、わが国では在庫が積みあがりつつある段階であることが分かる。国際サプライチェーンにおいて、川下にある米国とインターミディアリの我が国との違いである。経験則からは、今後、最低でも数四半期は生産調整が続くことが予想される。

3. うち電気機械工業
鉱工業生産が大きく落ち込んだ直接の原因は、世界的なハイテク市場の冷え込みを反映して、電気機械工業が大きく落ち込んでいることである。4月の速報値では、同セクターは、前月比▲6.1%、前年同月比▲9.6%と大幅な下落を見せた。98年の不況期に匹敵する下げである。5月、6月の予測指数も前年同月比ベースでそれぞれ▲6.3%、▲14.4%となっており、更に深い谷が予想される。同セクターはこれだけ大幅な生産調整を行っているのにも関わらず、在庫は増加を続けており、2001年第1四半期の在庫指数は前期比+7.4%、4月の速報値は前月比+2.0%となった。

4. 景気動向先行指数(日本)
グラフは、景気動向指数のうち、景気の先行きを見る材料とされる先行指数の動き。景気動向指数は、在庫・労働・投資・生産・消費・物価・金融・企業経営・中小企業といった9つの経済分野からそれぞれの動向を示す指標を使用し、各指標系列の各月の値を3ヶ月前の値と比較して、改善を示した指標の数を採用指標数で除すことによって得られる。これが50%を上回れば景気は拡張局面、50%を下回れば景気は後退局面にあると判断される。

グラフのデータは3月分までであるが、年明け以降完全に後退期入りしたことが見てとれる。先行指数が底を打てば、経験則からは、そこから約2ヵ月後に景気が底をつけるをいわれているが、現状、先行指数が底打ちする様子は見られないことから、実際の景気の底は更に先になると考えられる。

5. ドル円相場
ドル円相場は、ここのところ120円〜125円のレンジで膠着していたが、5月22日に発表された旧西ドイツのIFO景況指数が市場予想以上に悪かったことをきっかけに、ユーロが対ドル・対円で急落したのを受けて、ドル円もつられて大きく値を下げ、23日には3月上旬以来となる120円割れを示現した。6月1日午後6時現在、118.30前後で取引されている。

ユーロ・円の急落は、円キャリートレードでユーロ資産を買っていたファンドが、IFO景況指数や悪化した独仏の第1四半期GDPを材料にユーロを投げ始めたことを受けて、日本の機関投資家がユーロ建資産を狼狽売りしたことによる。6月1日には昨年12月以来となる100.15円/ユーロまで下落している。ドル円単体では足許の日本経済の悪化や構造改革によるデフレ圧力への懸念等を考えれば、むしろ円売りとする見方が多いが、ユーロの下落が一段落するまで、ドル円も売り圧力に晒される可能性が高い。ECBによるユーロ買い介入を期待する声もあるが、昨年と同様、ECB内での意見統一がとれていないと見られること、投機筋のユーロ売りポジションがまだ積み上がっていないため、介入しても売り場を提供するに過ぎない可能性が高いこと、実質・実効ベースのユーロはさほど下がっていないこと、等を勘案すれば、ECBの介入は期待しづらい。

しかしながら、本邦にとってはこれ以上の円高進行は経済にとって好ましくないとの見方も根強く、更に円高が進んだ場合、当局が何らかの手を打つ可能性は無視できない。今週の予想レンジは116円〜122円。