ゲスト一覧

第310回 2006年12月9日放送 バンダイ 上野和典 社長

ガンダムを好きな人が多いことは知っていた。しかし、このページを書く為に関連するホームページを探そうとしたら、検索でヒットした数が2660万件。「われこそガンダムファンである」と主張するホームページが数多く存在していた。そんなガンダムファンの心をつかんでビジネスを展開しているのが、玩具メーカー大手でキャラクタービジネスを得意とするバンダイだ。上野和典社長はCGO=チーフガンダムオフィサーという肩書きを持ち、関連会社を含めガンダムに関わるビジネスの全てを統括している。

ガンダムがテレビ放送を開始したのが1979年。その後も続編が次々と放送され、映画化もされている。そのファン層は幅広い。1979年の放送を見ていた今のお父さんの世代からその子供たちまで、親子二世代から支持を得ている。ガンダムのように大人も取り込んでいるということが、少子化の進行を背景に玩具市場が縮小傾向にある中で非常に重要になっている。所謂「大人買い」が期待できるからだ。例えば販売価格35万円で売り出したガンダム、高価格にもかかわらず予約は好調だという。350分の1スケールの宇宙戦艦ヤマトの模型も4万7250円という価格だが反響は大きいという。大人が装着できる「初代仮面ライダー」の変身ベルトは3万1500円もしたが完売状態。こうした実績は大人にファンが多いキャラクター商品だからこその強さだ。ただ、こうした高価格商品は作り込みも精巧。「古くからのファンにも納得してもらえるものを作りファンを逃がさない」でいるのだ。

バンダイでは、売上高の9割をキャラクター商品が占めていて、取り扱っているキャラクターの数は200種類以上。そのバンダイが最初に手がけたキャラクターは1963年に発売した鉄腕アトムで、その後、ウルトラマンやマジンガーZ、そしてガンダムと次々に商品化していった。テレビアニメの製作にも企画段階から参加し、夏休みや冬休みなど"需要期"に合わせてタイムリーに新商品を投入するビジネススタイルを確立した。今では玩具だけでなくゲームソフトやアパレルまで幅広く展開している。

1996年、世界45カ国で販売され、世界中の子供たちをとりこにした「たまごっち」もバンダイのキャラクターだった。玩具業界では、40から50万個売れればヒット商品と言われ、100万個売れれば大ヒットとされているが、たまごっちは4000万個も売れた。上野社長もこの数字を「未体験ゾーン」と表現している。「このビジネスはハイリスク。一応セオリーはあるが、その通りにいかない。やってみないとわからないのが本音」だと言う。実際、そのリスクの大きさを教えてくれたのもたまごっちだった。まさに社会現象にまでなっていたたまごっちのブームは突然去り、過剰な在庫を抱え込むこととなった。その処理に当たっては特別損失まで計上した。これがキャラクタービジネスの怖さなのだ。

2004年、そのたまごっちが息を吹き返した。最初のブームのときにたまごっちを担当し、厳しい経験を積んだ社員達がリベンジ計画を遂行したのだ。「リベンジだけあって担当者の力の入れ方が違った」と言う。たまごっちの"中身"を以前より充実させ2500万個を売り上げると共に、その関連商品も文房具から衣料品にまで600種類にまで広げている。

ヒットするかどうかが予測できないように、どの世代にうけるかも予測できない。その代表が「プリモプエル」シリーズ。これは5歳の男の子という設定のぬいぐるみで(女の子のプリモプエラも発売)、体のいろいろな部分にセンサーが付いていて、そこを触ると言葉を話す。口から出てくる言葉の数は400〜500。歌を歌うことも出来る。時計機能もついており、お誕生日の時には「おめでとう!プレゼントある?」クリスマスには「メリークリスマス!」、冬になれば「まだまだ寒いね」などと話してくれる。しかも、こちらから話しかけ、かわいがってやると、話す言葉の種類が増えて性格も優しくなるという。開発段階では、20代から30代の一人暮らしのOLをターゲットにしていたが、いざ蓋を開けてみると、子育てを終えた40代から60代の女性から熱烈な支持を受けた。彼女たちの子を思う親心をくすぐるように、バンダイではプリモプエル専用の洋服を500種類も用意。(架空の)プリモ幼稚園も開園し入学願書を受け付けている(願書を出すとクラス名が書かれた名札が届く)。プリモ病院やプリモ新聞も存在する。ここまで来ると玩具というよりは、癒しのよりどころのような存在と言えるのではないだろうか?

「漫画を子供から大人まで読む日本人の目は肥えている」。そんな市場で育ったキャラクタービジネス、いまは海外展開が課題となっている。上野社長は「カテゴリー別に絞ってはいくが、チャンスがあれば進出し、ニーズがあるところには仕掛けてゆく」と、力強く話している。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • 古くからのファンに納得してもらえるものを作り、ファンを逃さない
  • このビジネスはハイリスク、やってみないとわからない
  • 大人から子供まで漫画を読む日本人の目は肥えている
亜希のゲスト拝見

おもちゃの世界は広くて深い!おもちゃを子供のものと思っていたら乗り遅れてしまうんですね。私はあまりキャラクターで遊ぶということはなくなりましたが、文房具店などで懐かしいキャラクターを見ると、不思議と子供の頃にタイムスリップし、主題歌が頭の中で流れたりします。最近、昔の漫画の復刻版が人気ですが、それもやっぱり「懐かしい!」という思いにかられる人が多いからでしょうか?しかし、プリモプエルシリーズをわが子のようにかわいがっている女性の姿は、少し切なく映ってしまいました。これも復刻版の漫画のように昔を懐かしいと思う気持ちからなのでしょうか。

「おもちゃは好き」と笑顔で答えられていた上野社長ですが、なんとバンダイ初の創業家出身ではないサラリーマン社長。経験された部署も玩具、菓子、アパレル、そして自動販売機など多岐に渡っていて、今やガンダムファンの憧れであるチーフガンダムオフィサーをも務める実力者です。そして、その実力はビジネスだけでなく料理でも発揮されていて、社内報に手書きイラスト入りの料理コーナーを持っているほど。前の本社ビルの社員食堂では「上野さんレシピメニュー」まで存在していたそうです。絵もプロ級で絵本展にも出品。いったいどこにそんな時間があるのだろうと思うほど多趣味の方でした。

ちなみに、パワーレンジャーシリーズは日本よりも海外でうけているそうです。実は2年前にフランス・パリでフランス版パワーレンジャーを見たのですが、黄レンジャーはやはり食いしん坊で、「フランスパン」をいつも食べていました(日本ではカレーですが)。