Self Docter Net
BS-i TOP

健康DNA ロゴ
ONAIR
CONTENTS TOP番組紹介今週のDNA!!
今週のドクター
ドクターQ&A
ご意見募集
バックナンバー
著書紹介

バックナンバー
2003年2月16日(日) テーマは『顎関節症』

今週のドクター今週のドクターは、
東京医科歯科大学歯学部附属病院
顎関節治療部
木野 孔司先生


【略歴】

’80年

東京医科歯科大学歯学部大学院口腔外科学 修了

’00年 東京医科歯科大学歯学部附属病院顎関節治療部
  助教授 現在にいたる

【ドクターの一言】
顎関節症の症状には日常生活での問題、精神的状況などが関係しています。このため診察ではそのような患者さんの問題点をできるだけピックアップするように努めています。

【著書】

「顎関節症はこわくない」
木野孔司、杉崎正志、和気裕之

砂書房
1998年
「顎関節症で困ったら、専門医が教えるセルフケア」 砂書房
2000年


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データ友達などと楽しく会話をしながら、ピーナツをポリポリ、おせんべいをボリボリと食べたりすると、「顎がだるくなった」と感じたことありませんか?そのだるさがひどくなり、顎に痛みを感じたり、口が開けづらいといった場合は、顎関節症にかかっているかもしれません。顎関節症は日本人の半数が経験したことがある病気だと言われています。しかも治療して完治したと思っても、また再発の危険性のある怖ろしい病気でもあるのです。皆さん、耳の穴の横を指で触ってみてください。そして口を大きく開け閉めしてみると、顎がずれて動いているのが分かるでしょう。それが顎の関節「顎関節」です。口を小さく開ける時は、下顎がくるりと回転。ところが口を大きく開ける時は、下顎が回転しながら前に移動します。口を開けると、データ咀嚼筋」という顎を動かす筋肉と、関節を包み込み、関節の補強をしている「靭帯」、そして「顎関節」の3つが同時に動きます。この働きにより、私たちは口を大きく開けることができるのです。この「咀嚼筋」「靭帯」「顎関節」の3つに障害が起きるのが「顎関節症」という病気です。症状はいくつかありますが、まず口を開けようとすると、顎が痛くなる。口が大きく開けようとしても、開けられない。口を開けると、カクカクと音がする。これが代表的な症状です。 この病気は食いしばり、偏った咀嚼など、いくつもの原因が、積み木のように重なっているのです。顎関節症の大きな原因となっているのが、「食いしばり」。ちょっと歯を食いしばってみて下さい。顎の周辺にかなりの力がかかっているのが分かりますか?この過剰な力が顎の関節に負担を与えているのです。歯を食いしばるのは、重い荷物を持ち上げる時やスポーツをしている時、仕事に集中している時や寒さをこらえている時など、無意識に歯を食いしばっています。また一般的に、歯と歯が接触している時間は1日に2,30分といわれていますが、データこの時間が長い人は顎関節症になる可能性があるのです。「歯ぎしり」も顎関節症の原因となります。通常、ご飯を食べている時にかかる力は、20〜30キロ。それが、歯ぎしりになると60〜100キロ近くもかかっているのです。歯ぎしりは想像以上に大きな力が顎にかかっています。音の出る歯ぎしりはおよそ、20%。残り80%は音がしない歯ぎしりで、本人も家族も気付かないケースが多いようです。顎関節症の原因には、「偏咀嚼」もあります。偏咀嚼とは、右か左のどちらか一方だけで噛む習慣のことです。片側だけで噛み続けていると、顎への負担が左右で異なるため、顎関節症を引き起こしやすいのです。「ストレス」も顎関節症の原因になります。ストレスを抱えている時は、無意識のうちに全身の筋肉が緊張します。もちろん顎の筋肉も緊張して筋肉疲労をおこし、顎関節症を発症する原因となります。顎関節症は障害を起こす場所によって、大きく分けて4つのタイプに分かれます。その中でも一番多いのが、関節円板の機能障害です。口を開けた時、関節の軸になっている下顎が、関節円板と一緒に回転しながら前に移動します。しかし、関節円板が下顎の前にずれていると、口を開けた時、引っかかっていた関節円板がはずれて「カクン!」と音が出てしまうのです。顎の関節は「関節包」「靱帯」という、線維性の組織によって、外側が覆われています。過剰な力が靭帯に加わると「顎関節」が捻挫したようになり、炎症を起こしてしまうのです。そのため、顎をちょっと動かしただけでも痛みが走るようになります。また、顎の骨が変形した顎関節症を、データ変形性顎関節症」と呼びます。この顎関節をエックス線写真で見ると、骨が変形して歪んでいるのがわかります。これは「食いしばり」や「歯ぎしり」など顎関節に強い負担を繰り返すことで、骨が失われ、逆にあまり圧力を受けない所は新たな骨が作られるといった正反対の変化が起きます。骨が変形しているため、口を開け閉めする時に「カクカク」ではなく、「ギシギシ」「ザラザラ」という音がします。そして咀嚼筋の機能障害。これは顎関節の筋肉痛とも言えるものです。顎を動かす時に使う筋肉「咀嚼筋」に、大きな負担が何度もかかると、筋肉は緊張しすぎて固くなります。そのため血管の循環が悪くなり、顎の辺りに鈍い痛みが起きてしまうのです。顎関節症は日常の何気ない生活習慣により、発症する病気。生活の改善を心がけましょう。
EXAMINATION 検査
顎関節症の検査法
問診 あごの状態や症状を詳しく聞く
触診 痛みを起こしている部分を調べる
視診 噛み合わせの状態を調べる
単純エックス線検査
  顎関節の骨の変形を調べる
MRI検査 関節円板の変形を調べる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
顎関節症の治療法
スプリント療法 噛み合わせの位置を安定させる
運動療法 顎関節を動きやすくする
咀嚼筋にストレッチ運動をする
関節円板整位術 関節円板を正常な位置に戻す

関節腔内洗浄療法・関節鏡手術・関節円板切除術
FRONTIER 最先端技術
データ顎関節症は治療して完治したとしても、しばらくたって、再発したり、症状が以前より重くなっていることがあります。そこで、何が原因で再発するのか、木野先生は、1年間に渡り、患者の生活習慣から性格まで徹底的に調査したのです。「生活障害・疼痛調査票」という質問用紙を家で記入してもらいました。 調査票の内容がこちら。
顎を使って日常生活で困ったことは?
13項目 ハンバーガー、寿司などの大きな食べ物を口にいれられるか
フランスパン、スルメなどのかたい食品を噛み切れるか
…など
食品摂取支障度も調べています。ありとあらゆる食品について、細かく丁寧に調べているのですね。
食べ物の口にいれた時の顎の状態?
3つの回答 大きく口を開けられないために口に入れられなかった。
かみきろうとして痛みを感じた、。
痛みはないが、すりつぶすことが困難と感じた。

174品目
 
あわび
とうもろこし
ほうれんそう
ゆで卵
魚介類
野菜
果物…など
痛みの感じ方を徹底的に調査したのです。
痛みの感じ方は?
24種類 ビーンと痛みを感じましたか?
じわっとにじむような痛みですか?
ずきずきするような痛みですか?
にぶい痛みですか?
はれたような痛みですか?
うずくような痛みですか
…など
1週間で感じた不安感も調べています。
1週間どのように感じた?
14項目 毎日楽しく過ごしていますか?
悩みごとがよく心に浮かびますか?
緊張感を感じることが多いですか?
…など
自分が神経質な性格なのかどうかも調べています。12個の質問で性格診断をするのです。
神経質な性格ですか?
12項目 自分は活発な方であると思いますか?
気分の波が激しい方ですか?
きまぐれな方ですか?
…など
この他、「生活習慣」から「スポーツ」「職場」「食いしばり・歯ぎしり」の有無まで、ありとあらゆる質問が用意されています。例えば、「あまり寝返りはうたない方である」など…、歯をくいしばりやすい生活かどうかを、尋ねます。さらに、「仕事は忙しいですか?」といった、ストレスを感じやすい環境かどうかを調べるのです。そして「歯ぎしりを指摘されたことはありますか?」など、寝ている時の食いしばりや歯ぎしりに関する質問も当然あります。この検査結果の集計から、神経質な性格顎関節症の再発や悪化を招くことが分かりました。神経質な性格の人は、不安感が強く痛みを感じやすい。さらに放っておくと「口を大きく開けられない」「眠れない」などの睡眠障害などが起こるのです。そのため、こういう患者には、精神安定剤などで不安感をとりのぞく治療を行う必要があると判断されます。今まで「この病気には、この薬が効く」というように、病気の種類によって決められた治療法が行われてきました。しかし本来は、患者一人一人に適した治療法こそ必要。これを「テーラーメイド治療」といい、現在、注目を浴びている治療法の考えた方なのです。
SELF MEDICATION 自己管理
生活の中で、知らず知らずのうちに、顎に負担をかけていることがたくさんあります。例えば、頬づえをついて本を読んだり、重い荷物を持ち歯をくいしばったり、肩で電話をはさむことや、かたい食べ物が大好きで、おせんべいなど良く食べるなど…。
データデータデータ
データデータ

【予防1】
まず日常生活の中で顎に負担をかけないようにすることが大切です。長時間のデスクワークも顎に負担をかける原因の一つです。デスクワークの時間が長くなると、顎の筋肉が緊張し、筋肉が疲れやすくなります。パソコンなどを長時間使うときは、30分ごとを目標にして、肩や首の運動を行い筋肉の緊張をほぐしましょう。
【予防2】
次に「寝る姿勢」に注意しましょう。大事なのは顎に負担をかけないこと。皆さん寝る時はどんな姿勢ですか?うつ伏せで寝ている人は、顎の筋肉が同じ位置で固定されるため、筋肉の緊張が続き、筋肉が疲れやすくなります。顎に負担をかけないように、寝る時は、あおむけで眠るように習慣づけましょう。また、枕の高さも大切なポイントになります。硬く高い枕を使用すると、顎をかみしめ、余計な負担が顎の関節にかかります。首の後ろにできるすき間をきちんと埋めてくれる高さの枕が理想です。すき間の計りかたは、頭と首に一直線を引き、首との間の長さが、自分に合った枕の高さです。

顎関節症の予防には、日常生活の改善が何より大事なのです。

copyright(C)