地球バス紀行トップへ戻る

地球バス紀行

毎週木曜21時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2016年4月14日 O.A.

#251 第3の性“ムシェ”が活躍する町へ

メキシコ
地図

今回の旅先は、メキシコの南部オアハカ州。
先住民サポテカの伝統文化が色濃く残るオアハカ州を巡ります。

オアハカ市場

多くの人で賑わう市場を歩いていると、帯のようなものをくるくると丸めている青年を発見。その正体はオアハカ名物のチーズでした。お腹が空いたのでオアハカ料理が食べられるお店を探していると、名物料理モーレ・ネグロをすすめられます。ご飯に黒いソースがかけてあるカレーにしか見えない料理の正体は、カカオと香辛料を煮込んだもの。甘辛い不思議な味でした。

アレブリヘス

オアハカの町を歩いていると、派手なオブジェを飾るお店を発見。飾りの正体はアレブリヘスというオアハカの民芸品でした。店内にも木製のカラフルで可愛らしいアレブリヘスがいっぱい。市内から1時間ほどの場所に工房があると聞き、さっそくバスで向かいます。
工房では、多くの若者たちが製作中。動物をイメージした作品に、彼らのルーツであるサポテカの伝統模様を一筆一筆丁寧に描いています。それは、村の民芸品というレベルを超えた、アートでした。

オアハカB&B

オアハカ市内で宿を探しているとB&Bの看板を見つけます。尋ねてみると運良く部屋が空いていました。案内された部屋は女性オーナーのセンスが光るとても素敵な部屋。翌朝の朝食はオアハカの定番朝ご飯であるチョコラテとタマル。代々受け継がれたレシピで作った料理は絶品でした。食後は部屋に飾ってあった一枚の写真をきっかけにオアハカの先住民族サポテカの話に。オアハカにはたくさんの先住民が暮らす村や町があることを知ります。女性オーナーからサポテカの歴史をもっと知りたければ南東部の町、フチタンへ行くことを勧められます。強い女性がたくさんいる町だということで、旅の目的地をフチタンに決め、向かうことにしました。

フチタン

同じ州内でもオアハカからは5時間もかかります。何度か山越えをしながら漸くたどり着きました。町を歩いていると、市場で男性にも女性にも見える方を発見。性別を聞くと、第3の性であるムシェだと言います。ムシェとは女性の心を持った男性のこと。フチタンにはムシェがたくさんいるとのことで、ムシェ仲間の美容師さんを紹介してもらいました。ムシェというのはサポテカ語で、この地ではいつの時代も認められていた人たちなのだと言います。美容師の方が翌日ある隣村の祭りで、女王の女の子のメークをするというので同行させてもらうことを約束します。

イグアナ料理

翌朝、市内を歩いていると「イグアナ料理が出来上がった」という町内放送が流れてきました。さっそく現場に向かうと、近所の主婦たちが容器を持って集まっています。みんなイグアナが大好物なのだそう。せっかくなので食べさせてもらうことにしました。見た目にはまだまだ原型が残っていて食欲はそそられませんが、鶏肉のようで美味しかったです。

隣村のパレード

ムシェの美容師さんと待ち合わせ、隣村に向かいます。祭りの女王の正体は村の女子高生。出会った時はあどけなさが残っていたものの、メークアップが終わった時にはすっかり女王に大変身。パレードはこの地方の伝統衣装を着た女性たちが派手な車で村中をまわるもの。車上からプラスチックの洗面器やらバケツを投げて配るもので、気をつけていないとどこから飛んでくるかわかりません。それでも村人たちは大はしゃぎ。元々はフルーツや収穫物を分け与え、豊作を祈るものだったそうですが、最近は生活品がメインなのだそう。配るものは変われども、村人同士で助け合うという習慣は変わらない、小さな村ならでは、人の温かさを感じる祭りでした。