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地球バス紀行

毎週木曜21時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2016年4月7日 O.A.

#250 華麗なるカーニバルの世界 ベネチア

イタリア

今回の舞台は、カーニバルに沸き立つイタリアのベネチア。豪華な衣装を纏い、仮面を付けた人たちが行き交う水の都を水上バスに乗って巡りました。大小いくつもの島々で形成されたベネチアには、車の走る道路がほとんどの地域にありません。そんな水の都に住む人々の移動手段は水上バスです。20もの路線が運河から運河へ、島から島へと繋がっています。
毎年1月の終わりから2月にかけて行われるベネチアのカーニバル。元々は謝肉祭のことですが、仮面を付けたり昔の衣装を着て楽しむベネチアのスタイルは1979年に始まったものです。特徴のあるカーニバルにしようと考えていた当時の町の人々は、ベネチアが最も輝いていた18世紀の姿を再現することを思いついたのです。そして、カーニバルに参加する人全てが18世紀の衣装を着てパレードをしたのが話題になり、今へと続いているのです。18世紀のベネチアでは、仮面を付けて身分を隠した貴族たちが庶民の暮らしを体験して楽しんでいたといいます。その風習も取り入れられ、“仮面”がベネチアのカーニバルの象徴になったのです。

仮面職人

水上バスに乗って歴史的建造物が立ち並ぶ“大運河”を満喫し、ベネチア島に上陸。迷路のような路地を歩いていると、仮面店を発見。中に入ってみると様々なスタイルの仮面が飾られ、その奥では若い女性の職人が仮面作りの真っ最中。「カーニバルで使うものよ」と素敵な笑顔を見せてくれました。

伝統のビロード織り職人

水上バスの中で出会った女性はカーニバルで着る18世紀の衣装を作るのに欠かせない“ビロード織り”の職人さんでした。女性に誘われ工房を訪れると、1700年代から使っているという木製の織り機でビロードを作るところを見せてくれました。ここで作られるビロードは高級品で、イタリアの有名ブランドからも発注があるそうです。

貸衣装店

ビロード織りの職人さんに紹介された貸衣装店を訪れてみると、絢爛豪華な18世紀の衣装がところ狭しと並んでいました。全て手作りで、忠実に当時の衣装を再現できるように研究にも余念がないんだとか。お勧めだというフランスの王様がベネチアを訪問した際に着ていたという衣装を見せてもらいました。

カーニバルの主役・12人のマリアたち

カーニバルでは衣装コンテストや時代衣装のパレードなど見所がたくさんありますが、メインイベントはオーディションで選ばれた12人の美女たちによる“マリアの祭典”です。10世紀にベネチアにやってきた海賊に連れ去られた12人の娘をベネチア人が追いかけて奪還したという実話を元にした祭典で、12人の美女たちは従者を連れて街中を練り歩き、メインステージで紹介されます。水上バスで出会った女性は、このメインイベントの運営スタッフでした。彼女に連れられて12人の美女たちに会いに行くと、美女たちは中世の立ち居振る舞いの猛特訓中。カーニバルの間は中世の女性になりきらなくてはいけないそうで、お辞儀や歩き方に悪戦苦闘していました。

カーニバル本番

メインステージのあるサン・マルコ広場には朝から大勢の聴衆が集まっていました。カーニバルは独創性豊かな衣装を着た人たちがそのセンスを競う衣装コンテストからはじまります。海賊やペスト患者と死神、樹木の妖精などに扮した出場者が会場を湧かせます。
その頃、12人の美女たちは300人の時代衣装を着た従者を連れてパレードをはじめていました。パレードの隊列がサン・マルコ広場に到着して美女たちが紹介されると音楽が鳴り始め、美女たちを中心に大きなダンスの輪が広がっていきます。その光景はまるで中世にタイムスリップしたかのような光景でした。