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地球バス紀行

毎週木曜21時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2015年6月11日 O.A.

#214 謎の古代文明を追って サルデーニャ

イタリア
地図

イタリア本土から西に187キロ。地中海に浮かぶサルデーニャ島はヨーロッパのセレブたちが憧れるリゾート地。歴史を振り返ってみると、沿岸諸国のどこにも属さない独特な文化を育んできた。その一つが島内で8000カ所以上も見つかっている謎の遺跡“ヌラーゲ”だ。ヌラーゲは巨石をを組んで作られた建造物で、大きい物になると高さ30メートル、幅50メートルにもなる。これまで多くの研究者が謎を解明しようと挑んできたが、紀元前1500年頃に作られたということ以外、何の目的で作られたのかさえ分かっていない。こうした巨石を用いた文明は、周辺地域を見ても、この島にしか存在しない。
今回は、考古学最後のミステリーといわれるヌラーゲを辿りながらサルデーニャの独特な文化にふれる旅です。州都カリアリから、北部トラルバ村にある保存状態の良いヌラーゲを目指します。

カリアリ(州都)

サルデーニャの州都カリアリは古くから地中海交易の要衝として栄えてきた港町。
観光客に人気だという旧市街を訪れると、犬の散歩中の男性と遭遇。カリアリで大切な場所だと、街の守護聖人サント・エフィジオを奉った大聖堂を紹介してくれました。

オローリ

サルデーニャ伝統の羊飼いたちが暮らす村、オローリ。代々仕事を受け継いできたという羊飼い一家を訪ねると、早朝から乳搾りや餌やりと羊の世話に大忙し。6歳の時に仕事を始めたという86歳のおじいさんは、羊のグリルを作ってもてなしてくれた。

ヌーオロ

山岳都市のヌーオロは、かつてローマ帝国が侵略してきた時も自らの文化を守ろうと抵抗し続けた人々が住んでいた。そんな街を歩いていると、独特な歌声が聞こえてきた。覗くと4人の男性が輪になって合唱している。これは“テノーレス”というサルデーニャの羊飼いたちの間で歌い継がれてきた民謡で、独自のサルデーニャ語で歌われる。羊飼いの日常や心象風景を歌うメインパートをを牡羊の声を模した低音パート、牛の声を模した中音パート、そして子羊の声を模した高音パートの3人がコーラスで支える独特な歌唱方法だ。
バスの中で出会ったシェフの店を訪れると、女性がヌーオロ独特の手打ちパスタの製作中。棒状に捏ねた小麦粉を引き延ばし、二つに折ってまた引き延ばし、あっという間に256本の極細パスタが完成。これはフィリンデウ神のいわれるパスタで、神の糸という意味なのだという。

トラルバ

旅の目的だったヌラーゲへ。3500年の時を越えて佇むヌラーゲは圧倒的な存在感を醸し出して今も存在している。どうやって作ったのか…何の目的で作ったのか…?謎は深まるばかり。調査に来ていたという考古学者に話を聞くと、ヌラーゲを作った文明の人々は農耕民族で、羊を飼い、青銅器を作って他の文明と交易していたのではないかという。そしてより発展した他文明と交易する中で徐々に自らの文明を失っていったのではないか…と。
今も多くの謎に包まれたヌラーゲは見る人を悠久の彼方へと誘ってくれる。