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地球バス紀行

毎週火曜22時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2013年7月9日 O.A.

#116 アスンシオン発日系移民の街へ

パラグアイ

地図

今回の舞台は南米・パラグアイ。首都アスンシオンを東へ出発しブラジルとの国境の街シウダ・デリュ・エステを目指します。そこで出会ったのは陽気な人たち、とてもカラフルなバス、そして地球の裏側で食べたとんかつ定食。そこには遠く離れたパラグアイと日本との味わい深い信仰の歴史があったのです。近くて遠いパラグアイ、なんだか懐かしい感じのする国です。

首都アスンシオン

パラグアイの首都、アスンシオンの朝。市場をのぞきに行ってみたけれど、とこも開店準備中で大忙し。いろんなお店があるけど、まだオープンしていません。その中で一件、営業しているお店を発見。なんと薬草をその場で調合してくれるハーブドリンク「テレレ」の出店。「テレレ」はパラグアイの伝統的な健康飲料。お客さんの体調に合わせて薬草を替えてくれる青汁スタンドみたいなお店です。次から次にマイ水筒持参のお客さんが。みんな出勤前にここで自分だけの「テレレ」を買って出勤するそうです。
市内バスに乗ってアスンシオンの街を巡っているといきなり漢字で「内山田」という大きな文字が、目に飛び込んできました。地球の裏側で看板に堂々と漢字が?興味津々でバスを降りてゆくと、その看板の隣のビルには「日本食レストラン」が。せっかくだから食事を、と入り日替わり定食を注文。持ってきてくれた日本語の流暢なウエイターさんに話を聞くと、自身は日系2世で、このレストランの隣は「ホテル内山田」。ウエイターさんのお父さんのビルでした。日系1世の方がこんなに成功しているんだなぁ。

イタグア

国境の街を目指して首都を出発、最初の中継地はイタグア。ここで乗り換えのバスを待ちます。それまで20分、街を散策してみようとぶらぶらしていると、素敵な刺繍作っている女性たちに遭遇。一枚の布に描いた図柄を刺繍糸で縫いとってゆくこの刺繍は「ニャンドゥッティ」。パラグアイの伝統工芸品です。布に細かい作業で刺繍を施し、それを切り取って仕上げます。一つ作るのに大きいものだと50日もかかる丁寧な仕事の産物。手間暇と技術が必要なこの「ニャンドゥッティ」。芸術品としても素敵なこの伝統の品、いまは継承者も減ってきてしまっているそうです。

イグアス

再び乗り込んだ東へ向かうバスの中で、イグアスへの途中下車を進められました。なんでも昔移住してきた日系移民たちが開拓した土地で、そこには日系人のコミュニティがあるんだとか。アスンシオンの街でも日系人に出会っているし、ここで途中下車をすることにしました。
イグアスの別名は「シラサワ」。地名も和風になっています。降り立つと、そこここに漢字の看板。大きな鳥居もあります。マーケットに行くと日本の米に、醤油やふりかけ、てんぷら粉など豊富な日本食材。掲示板にも日本語の貼り紙が。元気な日本語の子供たちの声が聞こえるので行ってみると、日系人学校のグランドでテニスの練習。たくさんの子供たちやお母さん方がいました。
しばらく歩くと移民資料館があったので入ってみました。館長さんにお話を伺うと、パラグアイへの入植は農業移民で1936年から始まり、途中戦争で中断されたものの1954年に再開、60年代後半まで続いたそうです。そこに飾られている入植した当時の様々な道具や開墾時の写真が、当時の苦労を物語っています。
この街にも日本人が経営する民宿があるというので探してゆくと、「民宿小林」を発見。綺麗なお部屋の民宿のテラスから広がる景色はかつて日本人が開拓した農地。のどかなこの風景には地球の裏側で必死に暮らした日本人たちの努力の結晶なんですね。

シウダー・デル・エステ

最終目的地、ブラジル国境の街シウダー・デル・エステ。ここの降り立ったときはもう湯型。街の市場を散策しようと思ったら、もう店じまいの時間。国境を越えてブラジルに帰る人たちの車で中心部の道も大渋滞。国境の見える高台から眺めるとゲートの先には橋になっています。この橋を越えればブラジルに行けるんですね。国の端っこまで来たんだなあ。

南米・パラグアイ。
そこに居たのは、サッカー好きの気の良い人たち。みな日本人の僕のことを優しく迎えてくれました。今も遠く離れたこの地で頑張っている多くの日系の人たちにも出会いました。なんだか、とっても優しい気分になれる国です。
ニッポンの裏側に、こんなに気持ちの近い国があったなんて。今度のワールドカップは、決勝でパラグアイとやりたいもんです。
また大好きな国が、ひとつ増えました。