歯磨き粉の起源


歯磨き粉の起源。それは今からおよそ3500年前の紀元前1500年。
古代エジプトのパピルスに、世界最古と言われる歯磨き粉のことが記されています。それは、主にビンロウと呼ばれる木の実と、ナイル川沿岸の土を混ぜ合わせたもの。当時のエジプト人は、これを歯磨き粉として歯を磨いていたと考えられています。

それから一千年経った紀元前500年のインドでは、最初の歯ブラシが登場します。それは、釈迦が広めた「歯木」と呼ばれるもの。歯木は木の枝であり、釈迦は弟子たちに、これを使って歯を磨く事を説いたとされます。この歯木が現在の所、歯ブラシの原点とされています。

やがて1世紀に入ると、歯木はインドから中国へ渡ります。
中国では歯木を作るのに、やなぎ楊の木の枝を用いた所から「楊枝」と呼ばれるようになります。この楊枝は、歯を磨きやすいように先を房状にした「房楊枝」と呼ばれています。これを用いて歯を磨いていたのです。

また中国では、歯磨き粉も、主に塩を使うようにも変わりました。

やがて6世紀に入ると、房楊枝の歯ブラシ、そして歯磨き粉に塩を使うという文化が仏教と共に日本へ伝わってきます。
日本に入った房楊枝はまず、仏教徒の間で口を浄める儀式に使われました。福井県永平寺に残る鎌倉時代の曹洞宗の開祖、道元が書いた「正法眼蔵(しょうほうげんぞう)」。ここにも、楊枝に関する文章が数多く残っています。

それから400年程経った江戸時代、ついに日本初の歯磨き粉が登場します。
それまで使われていた塩に代わり、1625年、江戸の商人・丁字屋喜左衛門が作って売り出したのが、日本最初の歯磨き粉!「丁字屋歯磨」、または「大明香薬」の名で売り出され、その袋には『歯を白くする』『口の悪しき匂いを去る』と効き目も記されていました。この日本初の歯磨き粉。その主な成分は、琢砂と呼ばれる、物を磨くときに使われる細かい砂に、香料である丁字や龍脳などを加えたものでした。

こうした歯磨き粉の登場も影響してか、房楊枝を使った歯磨きは、一般庶民の間にも、見る間に広まって行きます。

当時、江戸でも人出の多かった浅草・浅草寺。
こちらの境内には実に200軒以上に昇る房楊枝屋が並んでいたと言います。

また当時、江戸の繁華街や買い物について詳しく書かれていた「江戸買物独案内」という、現代でいうタウンガイドブック。
そこにも、江戸の歯磨き粉専門店や歯医者・入れ歯師の案内が数多く書かれ、当時の江戸の人々の、歯磨きに対する関心の高さが窺えます。

東京・日本橋にある老舗の楊枝屋さん、「さるや」。こちらのお店は、八代将軍徳川吉宗の時代の創業で、なんと300年以上の歴史を持つ老舗!
現在も、大正時代まで使われていた貴重な房楊枝が、展示されているのです。


現代人に多い歯のトラブルとは?


今の日本人に多い歯のトラブルとは?
東京医科大学口腔外科 金子忠良先生に伺いました。

金子先生:「一番多いのは歯周病です。歯が抜け落ちてしまう原因です。」

歯周病とは歯のプラーク、つまり歯垢の中にいる歯周病菌によって、歯茎や歯槽骨などが侵されてしまう病気。

一方、歯周病はその状態により、「歯肉炎」と「歯周炎」の2つに分かれます。
健康な状態の歯茎が歯周病菌により、炎症を起こしてしまう。この状態がまずは歯肉炎と呼ばれるもの。
進行が進み、歯の根元の歯槽骨まで歯周病菌が入り込み、歯茎がえぐれてしまう状態を歯周炎と呼んでいます。
この状態になると歯の土台がボロボロになり、最終的には・・・歯が抜け落ちてしまうのです。

この歯周病の原因とは何なのでしょうか?
金子先生:「食生活が一番大きな問題点です。あまり噛まないで食べられるというような食生活に変化したことです。やわらかい物は食べカスが歯に付着しやすく、プラーク(歯垢)が発生してしまいます。噛むことによってだ液が出てくるのですが、噛まなければだ液の分泌量が抑えられて、だ液の口内洗浄作用が働かなくなってしまいます。また、最近、循環器系疾患が増加していて、治療薬がだ液の分泌を抑えるため、歯周病が進行しやすい状況になってしまいます。」

歯磨き粉の種類


現代の歯磨き粉。そこに含まれている主な成分は、フッ素。
歯を磨く事により、フッ素が歯に取り込まれると、表面が強くなり、酸に溶けにくい歯となります。
すると虫歯菌の酸に対して抵抗力が高まり、虫歯予防になる訳です。

さらに、殺菌剤・抗炎症剤なども入っており、虫歯予防と同時に歯周病の元となる歯周菌の繁殖を防いでくれます。

そして、何とビタミンCも!でも、どうしてビタミンCが?

歯の構造を見ると、歯茎の約6割はコラーゲンから出来ています。コラーゲンとは、歯と歯茎を、結びつける働きもしている成分。
ビタミンCには、コラーゲンの働きを促進する効果があるため、歯茎を張りのある健康的な状態に保つ事ができるのです。

正しい歯の磨き方


東京医科大学口腔外科 金子忠良先生
歯ブラシの正しい持ち方は?
金子先生:「一番磨きやすいのは、鉛筆を持つように歯ブラシを持つペングリップという持ち方です。もう一つは、パルムグリップという持ち方です。親指で歯ブラシの柄の部分を持ち、前歯の裏側などを磨きます。」

奥歯の、食べ物をかむ面の正しい磨き方は?
金子先生:「ペングリップで歯ブラシを持ちます。食べ物を噛む面の歯には溝がありますので、一つ一つ丁寧にその溝を意識して磨きましょう。」

歯の側面の正しい磨き方は?
金子先生:「歯の軸に対して、歯ブラシを45度の角度であてましょう。歯肉溝に歯ブラシの先が入るようにして、細かく振動させて磨きましょう。」

前歯の内側の正しい磨き方は?
金子先生:「パルムグリップという持ち方で歯ブラシを持ち、歯の根元からかき出すように1本1本磨きましょう。1日に1度は5〜10分程度歯を磨く時間を作りましょう。虫歯の予防になり、歯周病の予防にもなります。」
歯ブラシの起源を広めたのがお釈迦様だったということに驚きました。ありがたい教えだけではなかったのですね。また、浅草土産といえば、今は法被や手ぬぐいですが、昔は楊枝だったことも驚きました。
毎日のケアは本当に大切ですね。一生使う自分の歯ですから、毎日1本1本丁寧に磨きたいと思います。